加賀見俊夫(13)目標1千万人

「いける」と「無理」交錯
中傷よそに達成 どっと疲れ

開園の大仕事を終え、ひと安心したのもつかの間、いろいろな批判がわき起こった。まずメディアをにぎわした「お弁当禁止」へのさまざまな意見だった。「お母さんの楽しみを奪うな」との批判もあった。私たちは「お母さんも一緒にパークで楽しみ、レストランで食事を楽しんでください」と呼びかけた。

禁止したわけではない。正面入り口の隣にお弁当が食べられるスペースを用意したが、パークの中ではご遠慮いただくことにした。夢と魔法が彩る非日常の空間に、ビニールシートを敷いてお弁当を広げる日常の光景が現れては、魔法が解けてしまうからだ。

ゲストのみなさんの不満もメディアの批判も間もなく消えた。1度来ていただくと、おにぎりは似合わないと分かるのだ。

なかなか消えなかったのが「数年でつぶれる」との冷ややかな見方だった。「こんな大きな遊園地が長続きするはずがない」「同じ遊園地に何度も行く人なんかいない」との声だ。オリエンタルランドは「開園1年で1千万人」の来園者目標を公表していたので、冷ややかな声はよけいに大きくなった。

レジャー業界では破天荒な数字だ。何しろ当時、首都圏の主要遊園地の年間来園者を足しても1500万人程度。「鉛筆をなめて作った数字だろう」というメディアもあった。もちろん好意的な報道もあったが、広報担当だった私は辛口の批判の方をよく覚えている。

記憶にあるのは開園前の取材。写真週刊誌から高橋政知社長に依頼が来て、私も同席した。辛口の質問はなかった。カメラマンが社長にバンザイをしてくださいという。「開園バンザイ」と記事を締めくくるのだと思った。ところが……。

発売された週刊誌を開いて「うわっ」と叫んた。バンザイ写真とともに紙面に躍ったキャプションは「倒産宣言」。両腕を持ち上げてお手上げというわけだ。社長は面白がったが、私は激怒して発行元の出版社に抗議に行こうとして止められた。

その社長も取材の甘い批判記事を載せた経済誌の取材には二度と応じなかった。ゆえなき誹謗や中傷に対しては闘うぞ、と私は燃えていた。

4月15日の開園からにぎやかな夏休みが過ぎ、秋が来た。来園者数は順調に伸びて、9月には500万人目のゲストを迎えた。アトラクション32、レストラン27、ディズニーのキャラクターグッズなどを扱うショップ39。コンテンツには自信があった。だが1千万人は非常に高いハードルだ。社内では「いける」との観測と「無理かな」という弱気な見方が交錯した。目標に届かないと、どんな批判を浴びるか分からないし、パークの先行きに暗雲が垂れこめる。

年が明けて84年になった。年末年始のイベントが終わり、寒さが厳しくなった。目標達成は微妙だった。

実を言うと私は社内の役職者に「休みを取ってお金を払って入場して」と呼びかけようと思っていた。ゲストの来園状況を日々確認しながら、じりじり、はらはら、緊張が続く。そして4月2日の午後、1千万人目のゲストが来てくださった。緊張が緩み、どっと疲れが押し寄せてきた。

(オリエンタルランド会長兼CEO)

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Bubbles of river disappear rapidly.

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