松本紘(25)外とつながる

「群れない」のは言い訳だ
東京オフィスや同窓会に力

総長になって意識的に取り組んだことに企業や地域、卒業生とのつながりを深める改革がある。研究などに使う記念館を寄贈していただいた京セラの稲盛和夫氏、計測技術研究者を顕彰する賞を設けていただいた堀場製作所の堀場雅夫氏には就任後すぐに挨拶にうかがった。

堀場さんからは「東大が警戒しとるで」と耳打ちされた。私は副学長時代から競争的資金の獲得に力を入れていたので、その戦略を強化すると思われたようだった。大学にこもっていても情報は入ってこないし、人脈も築けない。できるだけ外部の人に会うよう心がけた。外部の目や声は気づきのきっかけにもなる。

京都大は「敷居が高い」と思われているようだった。法人化した今、何の努力も工夫もせずに予算が付き、企業が資金を出し、優秀な高校生が志願してくれるわけではない。企業の本社が関西から移って意思決定を東京でしているのに京都大の東京での存在感は想像以上に小さかった。

産学連携や寄付金獲得、政府や政党への要望、首都圏の高校との関係づくりなど様々な活動をする拠点として東京オフィスを設けた。経費がかかるため反対もあったが、将来への投資と位置づけた。首都圏の高校長が集まる会で京都大をPRしたり、東京都教委と連携して京都大を紹介するセミナーを開いたりした。

同窓会も強化した。学部の同窓会だけでなく、地区別の同窓会を増やし、海外にも設けた。卒業生のネットワークでは慶応大がしっかりしていて、同窓会の三田会が各地で会合を開いていた。東京大には経済界や官界に外部からは見えない人脈があった。

京都大は斜に構え、「群れないのが特徴」と自慢する人もいた。私は同窓会の会合で大学土壌論、大学基軸論を唱えた。大学は自分を育んだ土壌であり、人生の節目に再訪し自分の立つ位置を確認する軸のような存在と考えてほしいという意味だ。「群れないというのは人間関係を作れない言い訳だ。もう言わないでほしい」と強調した。

2010年には京都商工会議所が事務局になった「京都の未来を考える懇話会」のメンバーに選ばれ、30年後の京都のあるべき姿を話し合った。京都大には「舞台は世界」との意識があるためか、地域とともに歩み、地域に貢献するという姿勢が弱かったように思う。私は地域課題の解決も大学の重要な役割だと思い、府市との連携を強めた。

懇話会では、会頭の立石義雄オムロン名誉会長、山田啓二知事、門川大作市長、府観光連盟会長を務める柏原康夫京都銀行会長らと3年かけて議論し、世界の文化首都、双京構想の実現、留学生5万人の大学のまちといった将来ビジョンをまとめた。この議論を通じて、30年先を考えるのがリーダーの責務と改めて認識した。

総長就任後、反発を受けながら改革に取り組み外部への発信を続けていたら、京都大OBの企業トップの方々が支援組織・鼎会(初代会長・和田紀夫NTT相談役)を作ってくれた。総長を個人で応援するという趣旨だった。三井住友フィナンシャルグループ会長の奥正之さんが中心になって声をかけていただき、多額の寄付を頂戴した。誠にありがたく、教養図書の購入や優秀な学生の表彰などに使わせていただいた。

(理化学研究所理事長)

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