松本紘(24)改革

教養教育は学びの根幹
企画・運営、一元化に踏み切る

総長に就任してすぐ組織の改革に着手した。総長室を設け、総長や理事を補佐する理事補、副理事というポストも新設した。法人化に伴い管理運営部門を充実させる必要があった。所属する部局だけでなく大学全体を見渡せる人、教学だけでなく大学全般の運営を考えられる人材を育てねばならないと感じていた。

京都大の校風は自由闊達、自主自立である。管理や束縛を嫌い、学部自治へのこだわりも強い。こうした伝統がうまく作用すれば、独創的な研究が生まれたりするだろう。しかし、時代の変化に合わせて全体の組織を見直し、身を切る改革もしなければならない時などには、各論反対、結論先送りが起きやすい。

教養教育の改革がその1つだった。教養教育のあり方を考える議論は1996年からずっと続いていた。14冊の報告書が出ていた。2003年に少し改革をしたが、企画をする組織と実際に教育を担当する組織が違うため、履修科目の需要と供給にズレが生じていた。1、2回生が履修できる教養科目は約千もあるのに、系統立てて学ぶ仕組みにもなっていなかった。

「いよいよ改革を実行する段階ではないでしょうか」と訴えた。会議を開いて意見を集約し、企画運営を一元的に行う国際高等教育院を設立した。伝統ある教養教育をつぶすのかという反発も起きたが、最終的には学内のほとんどの方に賛成してもらった。

私は教養教育は非常に重要だと考えている。学問の習得を樹木の成長になぞらえると、大学の教養教育は高校時代までに育った樹をしっかり伸ばす役割を担う。ここが揺らぐと、専門教育をしても枝の先端は伸びず、豊かな実りは生まれない。幅広い知識の積み重ね、深い教養がないと独創的な発想も出てこない。家庭教育や学校教育も含めた問題だ。一大学でできることは限られるが、先取の気風も京都大の伝統である。足踏みせずに前へ進もうと思った。

研究者が組織の壁を越えて交流する仕組みも手掛けた。学外の人には理解しがたいかもしれないが、同じ分野の研究者でも所属組織が違うと、学内で会うことはほとんどない。また、学問領域の細分化が進み、隣の人がしている研究が全然理解できないような状況も生まれていた。

そこで、部局横断的な研究を支援する学際融合教育研究推進センターを設立した。大きなテーマの研究を多角的に進めるため、様々な学部や研究所の教員らでユニットを作り、連携、協力するのだ。若手の研究者を中心に現在34のユニットが動いている。

海外の大学との交流事業も活用した。連携協定を結んだ英国のブリストル大学とのシンポジウムには様々な部局の卓越した教育研究グループから約90人が参加し、学内の研究者の交流の場にもなった。

部局の枠を越えた協力を進める教員組織の改革には反対も強かった。2年にわたる議論を重ね、2014年3月には、学域・学系制度という新たな仕組みの導入を決定した。様々な改革には批判も出たが、議論に費やした労力と時間、関係者の努力を考えると、今やらねばならないと強く感じた。

苦しい状況が伝わったのか、あるとき、総長室に昔ガキ大将だった幼なじみから電話がかかってきた。「松ちゃん、最近いじめられとらへんか。いじめられとったら俺に言いや」。電話で話しながら思わず笑ってしまった。

(理化学研究所理事長)

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