松本紘(21)副学長

資金獲得や運用に風穴
人と人の壁払い財務を改善

生存圏研究所の所長を最後に定年退官で京都大を離れると思っていた。しかし、尾池和夫総長から財務担当の副学長就任の打診があった。「財務なんか分かりません」と言うと、「何ができる」とおっしゃる。「研究担当ならやります」と答えると、「それじゃあ研究と財務、両方頼む」となった。

2005年10月、理事兼副学長に就任した。前年、国立大学は法人化された。国からの運営費交付金が毎年削減されるため、財務改革が急務になっていた。昔から何か問題があると引っ張り出されて解決に関わることが多く、「困った時の松本」などと言われていたので、そうした腕を見込まれたのかもしれない。

知らないことは勉強し、教えを請うしかない。財務の基本を学び、担当職員と議論すると、いくつか改善できそうな点が見えてきた。例えば、運営費交付金や補助金はいつでも引き出せるように寝かせてあった。そこで入出金の情報を迅速に把握し、支障が出ない範囲で短期で運用した。

こうすれば利子収入を得られるのを職員はよく分かっていた。しかし、これらは教員の研究資金であり、手は付けられないと思い込んでいた。逆に教員はこうした資金の運用を考えることなどない。「責任は私が取るから」と言って、実行してもらった。

後の総長時代までを通じて感じたことだが、教員と職員、部局の間にある壁がまさに障壁になって、アイデアが出ず、力を発揮できない状況が生じていた。そうした動いていない部分のスイッチを「切」から「入」に切り替えるだけで改革が進むことがある。

競争的資金の獲得にも力を入れた。私は科学研究費補助金(科研費)を得るのがうまかったと自負しているが、そうでない研究者も多い。個人の努力や才覚頼みでは限界があり、大学が組織として企画立案などを手助けする必要があると考えた。その担当として、プログラムオフィサー(PO)、POを束ねるプログラムディレクター(PD)というポストを設け、資金獲得のノウハウにたけた教授や准教授に就任してもらった。

産学連携も担当したので企業の視点を持つ方のご意見を聞いた。米国IBMの研究所に長く在籍し京都大教授になられていた村上正紀さんからは合理的な研究管理など改革のアイデアを出していただいた。「日本には無駄に時間を費やす会合が多すぎる。皆が不満を持っている」と意思決定の遅さの改善を促された。

京都大出身の企業幹部らの意見を聞く会も設けた。トヨタ自動車で将来の科学技術などの課題を探る研究所の所長を務めた井上悳太さんからは、京都大の産学連携施策が外部から全然見えないなどと厳しいご指摘をいただいた。

京都大は常に改革に取り組んできたし、私も少しかかわった経験があった。井村裕夫総長時代には私と医学部、法学部の教授らが呼ばれ、改革の議論をした。長尾真総長も運営体制の強化をされた。長尾総長の部屋には時々お邪魔していたが、あるとき、「京都大にはいろいろ問題があるんだ」とポツリと漏らされたこともあった。

私は副学長室に詰め、担当の業務に専念した。「法人化したのに、京大の意識は以前の国立大学のままだ」という危機感が強まっていた。

(理化学研究所理事長)

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