川村隆(30)シニアライフ

会社離れ気ままに生活
将来は教育で社会へ恩返し

最終回はシニアライフについて書いてみたい。今は、諸々の「残務処理」もあって東京・丸の内の本社に通う日々だが、なるべく早くそういう生活は終わりにしようと思っている。引退後にしたいことがたくさんあるからだ。

シニアライフについて考えていることは3つある。まず1つは心身ともにくたびれた自分を癒やすことだ。要は自分のしたいことだけして、気の進まないことはしない。言ってみれば、子供時代に戻るようなものだ。

私が好きなのは読書、スキー、ゴルフ、思索(はた目には何もせず、たんにボーッとしているだけ)、散歩、英語の勉強、小唄、能や文楽や美術の鑑賞、学問の先端調べなどなどだ。「学問の先端調べ」とは、人類学や分子生物学、宇宙物理学などの最先端の知識をウェブや本や学術誌で調べて悦にいることだ。

人類学を例にとると、チンパンジーは群れの間ですさまじい闘争を繰り広げ、同類殺しを辞さないことが最近の研究で分かってきた。しかし、チンパンジーと共通の祖先を持つ人類は、普段はそこまでの暴力衝動に駆られることはなく、協力して文明を発達させてきた。人類とチンパンジーを分かつものは何か、こんなことをネットで検索すると芋づる式に膨大な資料が現れるであろう。それを1つずつきちんと調べる時間が取れれば、これほどおもしろいことはあるまいと思う。

また、スキーや旅行でも欧米人のように1つの場所に腰を落ち着けて、長期滞在型のバカンスを楽しんでみたい。

2つ目は社会に出てから半世紀の間にたまった「浮世の垢」の洗濯だ。私の家は東京・吉祥寺の一軒家で、以前自宅まで取材に来た記者が「日立の会長なのに小さい家ですね」と率直すぎる感想を口にしたこともある。その小さな家に使い道の分からない道具やその他無数の役に立たないモノが堆積していて、それをきれいさっぱり片付けたい。要は断捨離である。

3つ目はこれまで苦労をかけた家族や、いろいろ心配してくれた友人たちをいたわりたい。まずは一緒に遊び、そしてその人の心配事に親身になって付き合いたい。そしてお世話になった社会への恩返しをしたい。例えば今ある教育関係のプロジェクトを応援していて少額ながら寄付もしているが、将来は自分の経験談なども講義してみたい。これもあまり無理せず、できる範囲でやることが大切だと思う。シニアライフで頑張りすぎても成果が上がらないし、本人にとっても有害だ。

かの兼好法師も世俗で起こる諸々のことに付き合っていると、「身も苦しく、心の暇もなく、一生は、雑事の小節にさへられて、空しく暮れなん」と言っている。1週間7日のうち1日を俗事に費やし、のこる6日を世俗を超越して仙人のように暮らす「一俗六仙」が私の願いである。シニアライフ、すなわち「日残りて昏るるに未だ遠し」の時期を有意義に過ごしてはじめていい人生だったと言えると思う。

最後になりましたが、これまで私を支えていただいた社内外の多くの方々に、そして妻や家族に感謝の念をささげて筆をおきます。

=おわり

(日立製作所相談役)

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