川村隆(27)IR Day

部門トップ社外に説明
問い詰められる経験、鍛える

日立製作所は売上高10兆円近い巨大企業だが、巨大さゆえの弱さやもろさも併せ持っている。日立には売上高1兆円規模の社内カンパニーや子会社もあるが、そのトップは上場会社のように資金調達に苦しむこともなければ、業績や成長性に対して外部からの厳しい目でチェックされることもないので、発想がどうしても内向きになる。

こうした悪弊を是正するには、どうすればいいか。そんな発想から2010年に始めたのが「Hitachi IR Day」だ。情報通信システム、インフラシステム、鉄道システムといったカンパニーのトップが機関投資家や証券アナリスト、メディアに事業の見通しや成長戦略、利益目標などを自分の言葉で説明するのだ。

09年に増資のためのIRで訪米した私は「なぜ米ゼネラル・エレクトリックはもうかっているのに、日立は赤字なのか」と散々問い詰められた。この時のつらさや悔しさが私の経営改革の一つの原点だが、それと同じことをカンパニートップにも経験してもらいたい。売り上げや利益の目標を社外の投資家に提示することで、それが単なる計画値から、石にかじりついてでも達成しないといけないコミットメントに変わるのだ。

内向きを変えるという意味では、取締役会改革も進めた。日立は委員会設置会社であり取締役は経営を監視する立場であるが、12名の取締役のうち7名が社外取締役で、社内論理がまかり通らないようにしてある。また、うち3名が外国人で、彼らからは「こんな低い利益率では存続できない」とか「日立には攻撃的な人がいない。これで世界の競合にどう対抗していくのか」といった耳が痛くなるような意見を頂戴することもある。こうした率直な議論を活発に交わすことこそ取締役会のあるべき姿であろう。

では私たち経営者が果たすべき役割とは何だろう。社長ポストを出世競争のゴールと考えて、社内で権勢を振るうことではない。会社の「顔」として振る舞うこともときには必要だが、これを自分の仕事の中心と見誤ると、セレモニー的な仕事の多かった私の副社長時代のように表面上は忙しそうにしていても、中身は空っぽということになる。

私の意見は「社長機関説」と言えばいいのか、社長も会社の中の他のポストと同じくある役割を割り振られた「機関」の一つであり、その役割とはそれなりの業績を維持しながら会社を成長に導くことだ。経営のプロとして、企業価値の持続的向上を実現することだ。難しい任務だが、これを達成してこそ経営者の名に値する。

自分の姿や行動を外から見るための「カメラ」を用意することも大切だ。自分はベストを尽くしているつもりでも、株式市場から高い評価を得るのは簡単ではないし、アナリストや投資家はこれで満足ということは決してない。社外取締役や投資家の発する辛口のコメントに私自身も多少めげた経験もある。

だがこんな時「あの連中は分かっていない」と怒ってはいけない。多くの場合は組織の外から客観的に会社を見ている彼らが正しいのだ。自分と会社の姿を正確に映し出すカメラを持つことが、健全な企業統治の出発点だと思う。

(日立製作所相談役)

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