重久吉弘(26)プラント襲撃事件

人命救出の願い届かず
犠牲者の遺志 全社員で継ぐ

2013年1月16日、アルジェリア内陸部のイナメナスで日揮が建設していた天然ガスプラントが武装過激派グループに突如襲撃され、10カ国40人の貴い命が奪われた。うち10人の日本人、7人の外国人が日揮の関係者だった。

私たちは「エンジニアリングは国を変える仕事」と信じ、世界のどんな場所にも出かけ、プラントをつくりあげて来た。当然、過酷な条件の現場もある。それが自然環境や風土、習慣の違いだけでないと分かってはいた。安全確保に必要な手立ては講じていたつもりだったが、想像を超える事態が起きてしまった。危険とわかっていて送り出すことは絶対にない。イナメナスに迫っていた危険を察知できなかったのが悔やまれてならなかった。

事件発生後直ちに私はアルジェリア政府に人命第一かつ迅速な救出を強く要請した。テロとの対決と人命優先の2つの課題に直面したアルジェリア政府は難しい対応に苦慮したことだろう。しかしながら、結果的には多くの貴い人命が失われることになった。誠に痛恨の極みであった。

様々な方が犠牲になった。高い技能を持ったベテラン、海外現場を知り抜いたスペシャリスト、フットワークのいい若者、そして私と幾度となくアルジェリアの様々な現場に立った同僚。日本人以外の犠牲者も同じように多彩な人たちだっただろう。多様な人たちがひとつのチームになり、大きなプロジェクトの完成に向け、働いていたのだ。それぞれの人生を中途で断たれた無念、遺された方の失意を思うと今も言葉が出ない。

事件直後から横浜みなとみらいの本社には弔問や献花のため、たくさんの方が足を運んでくださった。山のように積まれた白い花の中には、「遠い異国の地で資源国のために働いていた皆さんを誇りに思っています。安らかにお眠りください」と書き添えたものもあった。弔問に訪れた方々の気持ちは、犠牲者を慰めただけでなく、日揮の社員にもう一度立ち上がる勇気を与えてくれたように思う。事件直後、私は社員が海外の現場に赴くことに不安を感じるのではないかと懸念していた。だが、まったく違った。皆さんの励ましで、社員は海外プロジェクトに以前にも増して意欲を燃やすようになった。

事件にはまだ解明できていない点もある。だが、アルジェリア政府は犯人グループの追及、治安の回復、工事サイトの安全確保に全力で取り組んでくれている。日揮はイナメナスのプラントを必ず完成させる。アルジェリアの明日に不可欠な事業だからだ。

この事件では日本政府に全面的な支援を頂いた。外務政務官を現地に迅速に派遣し、アルジェリア政府との交渉に当たっていただいたことや、犠牲者や生存者の帰国に際し政府専用機を手配していただいたことなど、本当に有り難かった。

13年3月26日に合同慰霊祭を開いた。安倍晋三首相、アルジェリアのユスフィ・エネルギー鉱業相はじめ3500人が参列した。「犠牲者の遺志を継いで資源国のプロジェクトに貢献していくことが本当の供養になる」。私はこう弔辞を締めくくった。

犠牲になった方々には「皆さんの貴い命が失われたことは決して忘れない。私たちは皆さんを誇りに思っていますよ」と伝えたい。

(日揮グループ代表)

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Bubbles of river disappear rapidly.

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