重久吉弘(23)スピーク・アップ

思い切って首脳と話す
親しくなりアドバイス頂く

「スピーク・アップ(Speakup)」は私が常に社員に実行を求めていることのひとつだ。意味は「思い切って話しかけろ」とでも言ったらいいだろうか。日本人は真面目だが「沈黙は金」という発想が強く、言葉のコミュニケーションより以心伝心のような相互理解を重視する。これは国際舞台では「わかりにくい国民」とみなされ、不利に作用することが多い。

私は根が楽天的で、オープンなせいか、大きな国際会議でも初対面の大物にできるだけ「スピーク・アップ」するようにしている。

2010年11月に横浜で開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議。日本の経済人も招かれたレセプションには各国首脳が顔をそろえた。だが、会場は静まりかえり、誰も首脳に話しかけようとしない。私はこんなよいチャンスをと思った。その時、オバマ米大統領の姿が目に入った。

「ミスター・プレジデント」。私は引きつけられるように歩み寄り、思わず話しかけてしまった。大統領は一瞬、きょとんとしていたもののすぐに笑顔になり、「何のお仕事をされていますか?」と私に聞いてきた。私は「エンジニアリング会社で、アメリカで言えばベクテルのような会社です」と答えると、話は盛り上がった。米国大統領でもその場に話し相手がいなければ寂しいものなのだ。

同じ会場で、韓国の李明博大統領(当時)にも話しかけた。「日揮です」と名乗ると、李大統領は「昔、日揮の本社に行ったことがあります」と返されたのにはこちらがびっくりした。大統領になる前に現代建設のトップを務められたので、日揮ともビジネス上のおつきあいがあったのだろう。しばし昔話に花が咲いた。

宴も終わり、会場の出口で各国首脳の退出を見送っていると、なんとオバマ大統領が私を見つけ、握手を求めて来られた。私も驚いたが、周囲の人はもっと驚いた。これもすべて「スピーク・アップ」の効果なのである。

「アジアの知性」ともいわれるシンガポールのリー・クアンユー元首相とも国際会議で私から積極的にお話ししたことで、覚えて頂いた。来日されると度々、お目にかかり、様々なことを教えて頂いている。あるとき、中国ビジネスの要諦をお尋ねすると一言。「老朋友(親友)を持ちなさい」。その後、中国に友人をつくる努力をしたが、確かに信頼できる友人から様々な知恵と情報を得ている。非常に役に立つアドバイスだった。

「スピーク・アップ」が多国籍の企業・人が参加するプロジェクトで重要と認識させられたことがあった。

中国・広東省で大規模な石化プラントをイタリアのテクニモント社と共同受注した時のことだ。工期中、問題が起きると、日揮社員は発注側への細かな説明よりも黙々と解決を急ぎ、テクニモントは発注側への状況説明を優先し、解決策を一緒に探った。

日本人ならば「言葉で説明するより、早く解決しろ」と言いたくなる。だが、完工後、発注者側から「品質や出来栄えは日揮の方が上だが、仕事のパートナーとしてはテクニモントの方が安心感がある」と言われてしまった。「スピーク・アップ」は今後、ますます日本人にとって重要になるだろう。

(日揮グループ代表)

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