フィリップ・コトラー(29)世界マーケ・サミット

関心の高さ・協力に感銘
「平和への貢献」も目標に

社会をより良くしようと努力している組織はいくつもある。そのなかで世界中の政府高官や財界人、著名な知識人が集まって毎年冬に開催されるダボス会議(スイス)からは刺激を受けると同時に、新たなアイデアを練るきっかけとなった。1995年、ジュネーブの空港から会場のあるダボスまで車で約2時間。雪に覆われた凸凹道に揺られながら考えていた。

ダボス会議より規模を小さくして経営戦略、マーケティングに焦点を絞った国際会議を開くことができないだろうか。テーマは「マーケティングを通じてより良き世界を創る」と決めて、準備作業に入る。具体的には国連が2000年に定めた「ミレニアム開発目標」(極度の貧困・飢餓の撲滅、初等教育の達成、女性の地位向上、乳児死亡率の削減、環境の持続可能性など)の8つの問題について集中的に討議する。

正式名称は世界マーケティング・サミット(WMS)に決めた。さて開催国をどこにするか。ミレニアム開発目標に挙がっている項目すべてにあてはまる国、バングラデシュがいいと考え、同国に打診した。するとシェイク・ハシナ首相が「マーケティングで世の中が向上するのならありがたい。ご協力しましょう」と快諾された。エネルギー、教育、財務担当の主要閣僚が開催に向けて奔走してくれたのがうれしかった。

12年3月、首都ダッカで第1回の会合を開き、世界中から政治家、経営者、学者など4000人が参加した。社会問題の専門家や新たなマーケティングの分野を切り開く著名な先生の講演に耳を傾けた。

議論だけでは社会は動かない。そこで、社会との関わりを意識したソーシャルマーケティングのパイロットモデルを作ることにした。毎年その進捗状況を報告して課題点を洗い出して改善を加える。再来年の15年の会議で「ミレニアム開発目標」に沿った新しいマーケティング・パラダイムを提示することにした。

ダッカでの成功を踏まえ第2回のWMSの会合を今年3月にマレーシアの首都クアラルンプールで開いた。会議が軌道に乗り出すと開催場所を選定するうれしい課題も持ち上がる。ダボス会議の例に倣って同じ場所で開くか、それとも世界各地で開催するかどうかだ。

第2回会議の直前、タイのバンコクでインラック・シナワトラ首相と面会したとき、思いも寄らぬ提案を受ける。「バンコクを恒久的な開催地にぜひ選んでほしい」。タイの有力企業数社も支援することを表明してくれた。

タイはダボス会議を開くスイスと同じように平和な歴史を持つ数少ない国の一つだ。国民の多くは仏教徒で、キリスト教とイスラム教などの宗教対立には関わっていない。王家は政治闘争などが勃発したときには緊張を和らげる役割を果たし、国民に深く尊敬されている。現在、政情が不安定になってきているのが気がかりだが、来年秋にバンコクで開きたいと思っている。

テーマは「新しいグローバル世界に於けるマーケティング」。この中では「マーケティングの平和への貢献」についても論じることになる。日本の皆さんにもぜひ、議論の輪に加わっていただきたい。

(マーケティング学者)

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