フィリップ・コトラー(23)イノベーション

水平思考のアイデアを
次代生き抜く投資のカギに

コンピューター、電子レンジ、スマートフォン、ナノテクノロジー。私が生まれた約80年前には影も形もなかった製品や技術だ。その後、人類は想像もできなかったような技術的、社会的、経済的、政治的な変化をこれまでに経験して現在に至っている。イノベーションの数々で生活は大きく変わった。

そのイノベーションを体系的に分析しようとバルセロナ(スペイン)のビジネススクール、ESADEのフェルナンド・トリアス・デ・ベス教授と研究を始めた。問題意識は「イノベーターが新たなアイデアを生み出すときに何が大切か」というものだった。

刺激を受けたのが1967年に出た「水平思考の世界」(エドワード・デ・ボノ著)だ。ある事を突き詰めて考える垂直思考よりも、いろいろな視点から考える水平思考のほうがアイデアを生み出しやすいことが説いてあり、我々の問題意識に近かった。

例えば、シリアルメーカーの場合、新しいシリアル商品を考える(垂直思考)のではなく、シリアルを使って他に何ができるかを考える(水平思考)ことだ。日本だとユニ・チャームが生理用品から始まり、子供用から大人用おむつ、ペットシートなど吸収体を軸に水平展開している。

フェルナンドはネスレの幹部として招かれた時にこの考えを実践し、そのアイデアは50以上になった。

彼との研究は続く。次の課題はイノベーティブになる組織作りだ。

いろいろな事例を考察し、「イノベーションのAtoF」をモデルにまとめた。読者の皆さんにも組織がそうなっているか確かめてほしい。

この「AtoF」とは、アイデアを思い付く人(アクティベーター)、本当に創造的で刺激的なモノか吟味する人(ブラウザー)、試行可能なコンセプトに変える人(クリエーター)、ビジネスモデルに発展させる人(デベロッパー)、新製品や新事業を立ち上げる能力のある人(エグゼキューター)、資金を供給できる人(ファイナンサー)だ。

イノベーションの神髄は経済学者、ジョセフ・シュンペーターが指摘した「創造的破壊」だ。かつてはどの業界も変化はゆっくりと進行したが、今日では多くの業界で劇的な破壊的変化が起きている。

それは私のいる大学院も例外ではない。今は世界的なビジネススクールとの評価をいただいているが、やはり不確かな未来に直面する。脅威なのはハーバード、マサチューセッツ工科、スタンフォードなど米国を代表とする大学の教授によるオンライン講座。今の大学生は毎年約4万5000ドルの学費を払い学位を取るが、授業に出なくても同じ内容が学べるならこれほどの学費を払い続けるだろうか。

ネット社会は家や車などの資産を保有する人が、見知らぬ人に貸し出すビジネスも生み出している。消費者同士が貸し借りする「コラボラティブ(協調)消費」と呼ばれる行為で、従来の商慣習とは次元が違う。

どの企業も既存の事業を破壊しかねない新たな脅威に敏感であるべきだ。また、手遅れになる前に自らが破壊的モデルに投資して、破壊に回るべきだ。10月に来日した際のイノベーションに関する講演でこう締めくくった。「5年先に今のビジネスモデルは通用しないだろう」

(マーケティング学者)

About sayfox
Bubbles of river disappear rapidly.

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。