フィリップ・コトラー(22)コトラー・デー

北欧に根付く私の提唱
講演きっかけに約15年続く

「ストックホルム(スウェーデン)で、経済発展におけるマーケティングの重要性について講演をしてくれませんか。丸1日がかりで」。1991年、講演紹介会社を経営するクリスター・エングレウスからの電話だった。

スウェーデンという北欧の国についてずいぶん前から関心を持っていた。米国で「中庸を行くスウェーデン世界の模範国」が36年に出版され、資本主義と共産主義という両極の中間に位置する「自由主義的社会主義」ともいうべき国を目指していることが紹介され、興味深く読んでいたからだ。

この国は長年、より良い健全な社会の建設にまい進してきた。子供は就学すると同時に喫煙・酒類の過剰摂取、習慣性のある薬物の危険性も適切に教わった。将来責任ある市民として健康で生産的な生活を楽しめる若者を育てようとする取り組みに胸がすく思いがした。

そしてなにより、人々の行動を変えるために私が提唱したソーシャル・マーケティングの世界最大規模、そしてまれに見る成功を収めた国であったのだ。67年9月3日午前5時きっかり、交通ルールを左側通行から周辺国に合わせるために右側通行に転換した際のすばらしいマネジメント力に感銘を受けた。

そんな国からの講演のお誘い。断る理由はない。むしろこちらが教えてもらいたいくらいだった。講演は本当に丸1日の長丁場で、密度の濃い有意義なものとなる。講演を終えると冒頭のクリスターから「大成功です。毎年9月にここで『コトラー・デー』と名付けたイベントを開きませんか」と、提案を受けた。

類いまれな手腕を持つ彼の提案に乗ることにした。イベントは北欧だけでなく世界中から最高経営責任者(CEO)や企業幹部1000人程度が集まり、情報交換する場所となる。毎年、映画「炎のランナー」のテーマソングとともに登壇する私を観衆が温かい拍手で迎えてくれたことが懐かしい。この催しは2005年まで続き、最後の年にはストックホルムの街中に「コトラーが来る」というポスターで埋まった。

スウェーデンからはこんな栄誉にも浴した。98年にストックホルム大学から名誉学位を授与するという連絡を受ける。推薦者はエバート・グメソン教授で彼はアメリカのマーケティング学会に大きな影響を与えた人物だった。米国のマーケティング学者のほとんどが製品のマーケティングに取り組んでいた70年代に彼はいち早くサービス分野での研究に取り組んでいた。

そんな彼が名誉学位の推薦者だったのがうれしかった。名誉学位はカール16世グスタフとシルビア王妃から授与された。王族と面会するのは初めての経験で、片手で名誉学位を受け取り、もう片方の手で国王と握手する作法を懸命に頭にたたき込んで式に臨んだのを覚えている。

スウェーデンとのきっかけを作ってくれたクリスターはネットで恋人を紹介するビジネスを立ち上げた。「僕が離婚したばかりで、新しい恋人を見つけるにはもってこいだ」とジョークを飛ばした。このビジネスは順調にいっているようで、欧州最大手を目指しているという。エバート教授との親交もさらに深まった。スウェーデンは学問的刺激と多くの交遊を作ってくれた特別な国の一つだ。

(マーケティング学者)

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