和田勇(28)会長に就任

海外展開で即断即決
キーマンと直接心通わせる

2008年4月。社長に就いてから、ちょうど10年の節目の年に、10歳若い阿部俊則君に次のバトンを渡して、私は会長兼CEO(最高経営責任者)に就任する。

社長としての10年間、立場は変わっても若いころと同じように挑戦の連続だった。行動の原動力は「前例がないからやってみる」という言葉に集約されるかもしれない。それは会長になっても変わることがない。私は海外進出の先頭に立つことにした。

かつて日本の住宅業界は国内のみで成立するドメスティックな産業だといわれてきた。しかし時代は変わった。日本の工業化住宅の優れた品質、そして何より、積水ハウスが先駆的な取り組みを続けてきた「環境技術」には世界の注目が集まっている。

この年の7月に環境を主要議題に開催された北海道洞爺湖サミットでも、二酸化炭素削減や省エネの最先端の技術を凝縮した「ゼロエミッションハウス」を展示。世界の人たちを驚かせ、その実力を証明した。

海外進出で最初に選んだのは豪州。不動産事業も手がけるバブコック・ブラウンという投資ファンド会社との提携を決め、契約締結のため、私が自ら現地に乗り込んだ。

ところが当日、遅れて席に着いた先方のCEOから耳を疑う言葉が発せられる。「不動産事業から撤退する」。事実上の倒産。銀行管理会社になるというのだ。さすがに戸惑った。ただ、投資家への配当に行き詰まったようだが、所有する不動産の内容はしっかりしている。私は優良物件だけを厳選し、新経営陣から買い取る方針を決めた。

担当者レベルの交渉では、ご破算になっていただろう。海外事業自体も頓挫するか大幅に延期していたに違いない。海外事業では最高責任者の即断即決が重要で、それを実感する場面が何度もあった。

新たな事業パートナーの一人、ペイス社のブライアン・ボイド氏の頼もしい協力も得て、豪州での住宅開発は順調に動き出す。クイーンズランド州のキャンベル・ニューマン首相、イプスウィッチ市のポール・ピサーリ市長には多方面に亘り大変お世話になっている。結局は人間関係だ。目先の利益を追いかけていては相手に見透かされてしまう。

シンガポールでも印象的な出会いがあった。ファーイーストオーガナイゼーション社のCEO、フィリップ氏。初対面の席で私は積水ハウスの環境技術について熱く語った。黙って聞いていた彼は話が終わると大きくうなずき、握手を求めてきた。「心が通じた。この人は信頼できる」。手を握り、私は確信した。

このときも壁にぶち当たる。リーマン・ショックだ。進出の判断は難しかった。彼は「無理はいけない。事業計画を見直しましょう」と伝えてきた。冷静かつ慎重、誠意を感じた。

その後も情報交換を続けた。気軽に誘い合い、何度も食事をともにし、互いのビジネスビジョンも語り合った。現在、同国での大規模プロジェクトに加え、豪州での共同事業も積極的に進めている。

リーマン・ショックと提携先の思わぬ事態でスタートした海外事業。私らしい新たな一歩だった。そして、大市場の中国、米国へ。各地のキーマンと心を通わせることで、海外事業は拡大していく。

(積水ハウス会長兼CEO)

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Bubbles of river disappear rapidly.

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