和田勇(24)バブル崩壊の傷

特損処理早急に決断
質を堅持し、コストを削減

社長就任以来、社員に自信と希望を持つことの大切さを訴え続けた。その手応えも感じ始めていた。しかし、意識改革だけではどうにもならない問題もある。積水ハウスには未来ばかりを語っていられないバブル崩壊の傷が、そこかしこにあったのだ。

それはIR説明会でのことだった。販売用に購入した土地の含み損に関して厳しい質問が相次いだ。確かに地価は軒並み下落していた。しかし、住宅販売に大きな陰りはなく、社内では再び地価も上昇し、含み損は解消するとの楽観論が主流だった。

私は数字を精査して「これは危ない」と思った。財務の専門家の観点とは違う、営業的な直感のようなものだ。「自分の目で、その土地を見てみよう」と動き出す。分厚い資料より現地だ。主に都市部にある購入地を1年かけて入念に見て回った。その間にも地価は下がり続け、景気の減速もはっきりしてきた。

「負の遺産は早めに処理して、財務体質を強くしよう」。私は腹を固めた。傷を抱えたままで、社員に未来は語れない。そんなことはしたくない。そして「今、決断して健康的な筋肉質の会社にしよう」と役員会で熱弁を振るった。しかし、反応はない。

リスクはあるが、私が全責任を負う覚悟でやり切るしかない。役員会閉会後の営業本部長会で、「私の判断が間違っていたら、この本部長会が私の送別会になるかもしれないな」と話した。緊張をほぐすつもりだったが、みんなの顔はこわばったまま。

販売用土地の評価損は2165億円。これを2000年1月期で計上することを会見で発表した。驚きの声が上がる。質問も相次ぐ。バブル崩壊後の地価下落に伴う、そこまでの財務リストラは産業界で前例がない。翌日のマスコミや市場の反応が気になって眠れなかった。しかし、それは杞憂に終わった。

「思い切った特損処理」と一定の評価を得て胸をなで下ろしたものの、問題は山積している。時価会計の適用により、固定資産や有価証券の評価損も計上する必要がある。02年1月期には固定資産1355億円、有価証券262億円を計上し、加えて、退職金給付債務の積立不足額568億円も償却することを決めた。

積水ハウスは上場以来初めての赤字決算となった。しかし、手遅れになる前に病巣は取り除けた。一方で、徹底して取り組んでいたコストダウンも順調に成果を上げている。社内の雰囲気も変わり始め、株価も安定してきた。後はさらなる収益力の向上だ。

日本経済はデフレ不況に突入し、住宅業界でも価格破壊ともいえる現象が起きていた。私はさらなるコストダウンを指示した。価格競争のためではない。積水ハウスはあくまでも住まいの質にこだわり、「中高級路線」を堅持する。その基本姿勢を変えることはなかった。

さらに、経営基盤をより盤石にするため、グループ全体の機能強化が新たな課題だと考えた。01年には累積建築戸数が150万戸を超えていた。戸建の新築だけでなく、このストックを活かして新たなビジネスチャンスをつくり出す。そういう将来像を実現するには、グループ会社の連携を密にすることが重要だ。

(積水ハウス会長兼CEO)

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Bubbles of river disappear rapidly.

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