和田勇(16)屋根材を改良

独自の平瓦で弱点克服
均一品質維持へ新会社設立

総合展示場のオープンもあり、名古屋でのプレハブ住宅の知名度は徐々に上がってきた。販売戸数が増えれば、街の中で新築のプレハブ住宅を目にする機会も多くなる。さまざまな施策の歯車がかみ合ってきた。しかし、在来工法の住宅の人気は根強かった。

「あの屋根がなんとかなりませんかねぇ」。お客様からそんな声を聞くことがよくあった。内装やプランは気に入ってもらえたのに、外観に納得がいかないという理由で、せっかくの契約を逃すこともあったのだ。課題は「カラーベスト」と呼ぶ屋根材だ。

カラーベストとはセメントとけい砂を原料にして、繊維で補強した平型の化粧スレート。軽量で耐久性に優れ、色のバリエーションも豊富なので、現在でも広く使われている。しかし、当時の技術では、経年変化による色あせなどの問題もあった。そして何より、愛知県が有名な三州瓦の産地であることもあり、在来工法の住宅に慣れ親しんだお客様は伝統的な和瓦への愛着が強かった。

ただ、洋風のプレハブ住宅に波状の和瓦はしっくりこない。私が注目したのは平瓦だ。断面が緩い弧状を描いており、名前の通り平たい形をしていて、スマートでモダン、品がいい。軽量だから施工がしやすいうえに、コスト面でのメリットも大きい。

まずは製造してくれる窯元を探さなければいけない。これまで一般にはあまり製造されておらず、新規に専用の窯が必要になる。頑固な瓦職人も多かったが、幸い宮政瓦、野安瓦の2社が毎月一定量を継続発注することを条件に引き受けてくれることになった。

量は確保できる。次は施工だ。これも新たな技術の習得が必要だ。屋根の工事に不手際があると、たちまち雨漏りという住宅にとって致命的な問題が発生する。

そこで、均一の工事品質を維持、向上させるために地元の信頼できる施工会社に共同で新会社を設立してもらった。1975年のことだ。社名は「アイトー瓦工業株式会社」。愛知県の10社が集まったので「愛十」。これをカタカナ表記にした。

アイトー瓦のメンバーは前向きで研究熱心だった。窯元とも力を合わせ、平瓦の改良や技術の向上にも意欲的に取り組んでくれた。そのおかげもあり、平瓦の需要は次第に膨らんでいく。業容は拡大し、積水ハウスから社員を派遣するまでに成長した。協力工事店は運命共同体。この精神がここでも活かされている。

この時代、住宅業界は「量の拡大から質の向上へ」の流れがより鮮明になっていた。「カラーベストから平瓦へ」という私の判断も市場動向と合致した。その後、平瓦は中部だけではなく、全国のプレハブ住宅に広がっていく。当時は考えていなかったが、現在では太陽光発電パネルが設置しやすいという機能性も歓迎されている。

いつもお客様の要望に、しっかりと耳を傾ける。「それは無理だ」と考えず、新たな技術開発にも積極的に取り組む。そして、協力工事店との関係を大切にする。

すべて、お客様の満足につながり、結果として会社の業績に結び付く。やれることは何でもやった。20代から30代。若さに任せて突っ走ったという方が正確かもしれない。

(積水ハウス会長兼CEO)

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