利根川進(1)研究生活50年

利根川進(1)研究生活50年
免疫学や脳科学に夢中
とことん考え謎に挑む

現在米マサチューセッツ工科大学(MIT)で教授を務めるとともに、2009年から理化学研究所脳科学総合研究センター(以下略して理研脳センター)のセンター長を兼務しています。そのため、日本と米国東海岸の間を頻繁に行き来すると同時に、学会講演やセミナーなどで世界各地を巡る日々を送っています。

京都大学大学院に進学した1963年9月、恩師の渡邊格、由良隆、両先生の勧めで米カリフォルニア大に留学して以来、50年海外で研究を行ってきました。理研の野依良治理事長と、当時できたばかりの理研脳センターの初代センター長であられた伊藤正男特別顧問が「ぜひ理研に」と熱心に声をかけてくださり、日本で初めて定職に就くことになったわけです。

学部生時代に化学を学び、大学院でそのころ急速に発展し始めた分子生物学に転じました。博士研究員として米ソーク研究所で働いたときにお世話になったレナート・ダルベッコ博士の紹介で、スイスにあったバーゼル免疫学研究所に移籍。「免疫学で100年以上も謎だった」とノーベル委員会のある委員が形容した、免疫多様性発現の仕組みを解き明かし、この成果で87年にノーベル生理学・医学賞を単独受賞しました。ちょうど1年前の今ごろ、京大の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞し、25年ぶりに日本からこの分野で二人目の受賞者が出たことを大変嬉しく思いました。

MIT教授に就いてからは、主に脳機能を解明する研究に力を注いでいます。脳は宇宙と並んで、学問の中で最後まで取り残された大きなミステリーです。ヒトの脳は高度に進化し、他の生物とは一線を画しており、脳を研究することは、つまり「人間とは何か」を突き止めることにつながると思っています。

生来、根本的な問題をとことん考えることが好きで、本当に面白い研究でなければ夢中になれません。免疫学と脳科学では全く違う分野にみえますが、私としては、「非常に興味がありかつ自分が貢献できるテーマは何か」を考えた末に行き着いた分野でした。

脳の研究は自然科学の中でも、物理や化学、数学、生物学など様々な分野にわたっていますし、哲学や心理学、芸術のような人文科学や情報科学、経済学、社会科学などにも大きな影響を与える学際的な学問です。日本の研究は縦割りになりすぎていて、横断的な取り組みが弱い。この点をどうやって強化していくのかが、今後の課題だと思っています。

日本の状況は多くの科学者が、研究以外の雑事にエネルギーを削られているように見えます。組織の稟議システムも非効率で、決定も遅くなりがちです。その点米国の優れた大学はより研究に打ち込める体制になっています。新しい知識を生み出すためには志と能力ある研究者を集めなければなりません。研究者にとってより魅力ある組織にしようと、理研脳センターの改革を進めているところです。

私はこれまで好きな研究をやり続け、節目節目ですばらしい先生たちや同輩、後輩に出会いました。そんな歩みを紹介して日本の研究者、特に若い研究者たちの活力を多少なりとも高めることにつながればと願っています。

(分子生物学者)

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