宮内義彦(17)取締役の心得

投資家の利益考え行動
USリースの筆頭株主退く

USリーシング(USリース)は我々の師だ。大株主というだけでなく、唯一の同業であり先輩会社。経営についてもすぐにわかりあえる仲。

それでも80年前後になると大株主との関係が微妙になる。わが社の株価が上がるにつれ、売却するところも出てくる。我々は特に師のUSリースとの関係を保ちたい。まず73年、乾恒雄社長がUSリースの社外取締役に就く新たな関係を築くことで合意した。

だが78年にUSリースは保有するオリエント・リースの全株を売却したいと伝えてきた。我々は資本関係をぜひとも維持したいと考えていたので、逆にUSリースの株式を買い、筆頭株主になった。親子関係が逆転したわけだ。社外取締役はわたしへと引き継がれた。専務のときである。

社外取締役には名士と呼ばれるような人が多かった。現役を退いた銀行トップ、ハーバード大学の金融論の教授、弁護士など。唯一の外国人がわたしだった。

取締役会は四半期に1度程度。できる限り出席した。会社側から取締役会に出る執行役は最高経営責任者(CEO)、社長、最高財務責任者(CFO)のせいぜい3人。期初に公表した収益計画は達成できているか、狂いが出ているとすれば原因は何か、再び計画軌道に復帰させられるか、などについて説明をじっくり聞く。鋭い質問を連発する取締役一人ひとりに、CEOがコーヒーを注いで回っていた。

一方、社業の執行に関するCEOの権限は絶対だ。取締役会さえ同意すれば、役員人事をはじめ社業に関するあらゆる事柄を差配する。経営の全責任を負うのもCEOだ。

最近でこそ、社外取締役をおく日本企業が増えてきた。もっとも、その役割について自身への助言役と考えている経営者が少なくないように思う。三十数年前、わたしがUSリースの取締役会で体験した社外取締役の役割は明らかにちがっていた。「金融・資本市場を代表する投資家の視線で物申す」のが役目だ。

こんなことがあった。

87年秋口、フォード社からUSリースを買収する提案があり、全株を売り渡す議案が取締役会にかかることになった。高値で買い取ると言っているのでオリエント・リースも応じてほしいとの内容だ。

わが社としてはUSリースとの資本関係を長く続けていきたかった。取締役会で反対票を投じる意向を固めてから、米国の顧問弁護士に相談した。答えは「社外取締役はすべての株主の利益を考えて行動すべきであり、筆頭株主だけの利益を代表して発言してはならない」というもの。

はっとさせられた。社外取締役を長年務めてきた身だが、取締役たる者の心得を改めて告げられた思いだった。その後に開かれた取締役会でこの議案にわたしは反対票を投じず、棄権する道を選んだ。こうしてUSリースはフォードの完全子会社になった。

その1週間後、ニューヨーク証券取引所で株価の大暴落がはじまった。ブラックマンデー(暗黒の月曜日)だ。結果論だが、USリース株を手放したのが吉と出た。

こうしてUSリースは消滅していったが、最後のCEOであるD・E・マンドー氏は今日に至るもオリックスの米国相談役を務め、貴重な存在だ。人のつながりは残った。

(オリックス会長)

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