渡文明(28)四人会

トヨタの張氏らと交遊
取引巡る積年の思い告白

様々な経営者の方々と知り合えて、よい刺激をいっぱい受けている。目から鱗(うろこ)のような経験もしばしばだ。とりわけ印象的だったのは、トヨタ自動車の張富士夫社長(現会長)との出会いである。

トヨタは毎年、部品の仕入れ先を世界中から集めて総会を開く。その場で、特に優れた成果を上げた仕入れ先を表彰する。

私が社長になったばかりの時に、トヨタから技術賞をいただくことになった。新たに開発した、自動変速機に入れる潤滑油が高く評価されたおかげだ。

表彰式に招かれて行ってみると、会場は1000人を超す人たちで埋められていた。「どうぞ、こちらへ」と言われてついていくと、何と張社長の隣の席である。

えっ。ここでいいのだろうか。中央に、豊田章一郎名誉会長のテーブル。それをはさんで左右に奥田碩会長と張社長のテーブルが並んでいた。張社長と親しく口をきけたのは、その時が初めてである。

終戦後、トヨタが経営的に苦境に立たされた時、多くの納入業者はトヨタとの取引を絞った。当時の日本石油も例外ではなかった。その後立ち直ったトヨタとの間でしこりが残った業者もいくつかあったようだが、当社がその対象になっているのか、確認したかった。

新しい潤滑油に技術賞をいただいたのはよい機会だ。「なかなかお会いできないんです」と言ったら、張社長は気さくに「いつでも、どうぞ」と返してくれた。しかし実際には、それからも簡単ではなかった。

トヨタの自動車を運搬している日本郵船の社長の草刈隆郎さん(現相談役)に、一遍紹介してほしいとお願いしていた。ある日、草刈さんから、張さんとゴルフをやるがメンバーが1人欠けたので来ないかと、誘いの電話をもらった。

喜んで参加した。一緒にコースを回ったもう1人は、矢崎総業の矢崎裕彦社長(現会長)で、これがきっかけになって、現在「四人会」と称して気の置けない交遊を続けている。

こうして関係が深まったころ、川崎市の武蔵小杉のサービスステーションで、自動車と双方向で情報をやり取りできるシステムの実証実験を始めた。当社とトヨタが参加し、実験を張さんと一緒に視察し、終わってから初めて2人きりで食事した。

この際と「トヨタさんとは昔、残念なことがありましたが、私の代からは何があろうと、誠実に取引させていただきますので、よろしくお願いします」と話した。

「そんなことが確かにありましたが、今はそういう時代ではない。トヨタもいけなかったんです。自分たちも反省しなければいけない。あのどん底があったから、今のトヨタがあるのです」。他人を恨むのでなく、逆に自省の言葉をごく自然に語る張さんの人間の大きさに感服した。

四人会の皆さんは、私が理事長をしている千葉県富里市の久能カントリー倶楽部の理事でもある。ゴルフの腕を競うだけでなく、夫婦そろってヨーロッパでクルージングを楽しむなど、活動の場を広げている。

このほかにも多くの経営者の方々と、ビジネスを離れてお付き合いして、いろいろ学べるのは実にありがたい。

(JXホールディングス相談役)

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