渡文明(21)改善より改革

「異論歓迎」の環境つくる
トラブル情報開示も徹底

社内の風通しをよくして議論を活発にするには、言うだけでは駄目だ。具体的な仕掛けが要る。日本石油と三菱石油の合併会社なので、それがより重要だった。

作成した経営ビジョンや経営計画をどう実行するか、私は社長になってすぐに社長直轄のプロジェクトチームを20以上設けてとことん議論させた。ミソはメンバーをいろいろな部門から集めて混成チームにした点だ。

例えば、人事問題を検討するところには、技術や営業などほかの部門の社員を入れて、人事部には事務局役をさせる。旧日石も旧三石も関係なく、各チーム10人程度で構成した。専門も背景もばらばらなので、最初はぎこちなく見当はずれな意見も飛び出す。

これが狙いで異質な意見がぶつかり合う中から、新しいアイデアが生まれる。改善でなく改革がはかれるわけだ。部門横断プロジェクトチームは、半年ほどでそれぞれ答申をまとめ、それを常務会で承認して実行に移した。

各部門の代表が旧会社の壁を越えて決めたことなので浸透が速く、期待以上の効果を上げた。対立した意見を大いにたたかわせて出す結論ほど、確かなものはないというのは、私の前からの主義でもあった。

社長時代、思わぬトラブルにもいくつか直面した。2002年、千葉県・幕張のサービスステーションをセルフに改装した時に、工事業者がミスした。ハイオクとレギュラーの地下タンクと計量器との配管を間違えたのだ。

「お宅のハイオクガソリンは馬力が出ない」と言ってきた客は1人だけで、オクタン価計測器を車につけている人だった。ハイオクを入れたと思ったら、実はレギュラーだったわけである。

対応策は3つ考えられた。1つは、放置する。2つ目はハイオクを買った人だけに差額分を返す。3つ目は差額でなく全額を返す。すなわちただにする。私は全額返金を指示した。

間違って売った数量は800キロリットルだった。返金すると発表したら、どんどん来て1000キロリットルを超え、期限を設けて打ち切ったが、当社の費用負担は1億円を超えてしまった。当時、牛肉偽装事件もあって、週刊誌などにも書かれたが、誠意が通じたのか、間もなく沈静化した。

もう一つ、子会社の新日本石油精製で保安検査データの虚偽報告問題が発覚した。吸収合併した旧興亜石油の製油所で高圧ガス保安法により交換すべき配管をまだ使えたので、換えたことにして監督当局に報告していたのだ。

これが合併直後にわかり、当局に自発的に届けて処分を受けた。記者会見をしなくてもいいのではないかとの意見も社内にあったが、あえて新日石精製の社長に会見させた。

問題が生じたら、トップの責任で適正に処理して、きちんと情報を開示するのが長い目で見て一番の上策だ。新日石精製の件も、隠さず開示したので、投資家から前向きに評価された。

また子会社で地域労働組合との争議が起こり、組合関係者が毎週土曜日、私の自宅にビラを持って抗議にやってきた。私はゴルフでいつも不在で、家内が1年くらい対応してくれた。和解で解決したが、私が社長だったために家内にはとんだ苦労をかけた。

(JXホールディングス相談役)

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