森喜朗(27) 後見役

郵政解散に強く反対
小泉首相は意見を聞かず

私の後継総裁問題は微妙だった。小泉純一郎さんには「君は2度総裁選に負けている。こんど負けたら政治生命は終わりだ。だから勝機があればやってもいいが、勝つことが前提だよ」とアドバイスした。

カギを握っていた平成研(橋本派)の候補者選びは難航した。野中広務さんを推す声もあったが、派内は「うん」と言わなかった。

橋本龍太郎さんが手を上げた。積極的に支持する声は少なく、最後は見切り発車のような形で出馬した。

小泉さんは「勝算あり」と見て出馬に踏み切った。私は古賀誠幹事長に「総裁として最後の頼みだ。地方票をもっと増やす工夫をしてほしい」と依頼した。古賀さんは地方票を各県3票まで増やし、1位候補者が総取りする仕組みにしてくれた。これが小泉さんに決定的に有利になった。

小泉さんの首相就任に伴い、私は清和会会長に復帰した。それまで小泉さんが留守番役で会長をしていた。今度は私が小泉さんの後見役のような役回りになった。

私は小泉さんに「参院は難しいから青木幹雄さんの意見だけは常に耳を傾けたほうがいい」と忠告した。小泉さんは人事でも派閥の意見は聞かなかったが、参院の入閣者は青木さんの推薦を受け入れた。この辺が小泉さんの政治的な勘の鋭いところだった。

田中真紀子さんの外相起用に私は断固反対した。小泉さんは「外相で約束しちゃったからどうしようもないんだ」と弁解した。これで外務省はめちゃくちゃになった。

小泉さんは政調会長に平沼赳夫さんを起用するつもりだった。平沼さんは小泉さんに「亀井(静香)さんの了解を取ってほしい」と答えた。小泉さんが亀井さんに電話すると「江藤(隆美)さんの了解を取ってくれ」との返事だった。これに小泉さんがぶち切れて人事は白紙になった。

「政調会長はだれがいい」と相談があった。私は「麻生太郎でどうか」と進言した。小泉さんは「あっ、そうだ。そうしよう」と同意した。

私は麻生さんに電話し「小泉さんから電話があると思うが、『河野(洋平)さんの了解を取ってくれ』とは絶対に言わないように」と忠告した。「わかりました。そのかわり、森先生から河野さんに話してください」

この一件で小泉さんと亀井さん、平沼さんの関係は決定的に悪くなり、その後の政局の波乱の目になった。

私は郵政解散にも強く反対した。首相公邸に乗り込んで「解散する理由はないぞ」と説得した。小泉さんは「郵政法案が否決なら国民の意見を聞くと最初から決めていた。これだけは譲れない」と言い張った。

会談が決裂して私が「外にどう説明しようか」と聞くと小泉さんは「小泉は殺されてもやると言っていた、と説明してください。その方が私もやりやすい」と答えた。

亀井さんたちは「解散なんてできるわけがない。これで小泉は終わりだ」と祝杯をあげていた。私は小泉さんとの会談後、記者団に「(会談では)缶ビールとひからびたチーズしか出なかった。けしからん奴(やつ)だ」と話した。

党内外に「小泉は本気で解散をやるぞ」というシグナルを送ったつもりだった。世間では「ひからびたチーズは実は高級チーズのミモレット」ということばかりが話題になり、チーズの宣伝をしただけに終わった。

(元首相)

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