LIBOR不正 きしむ巨大金融(中)

膨張の30年、ひずみ蓄積

金利の不正操作、巨額損失、マネーロンダリング(資金洗浄)と立て続けに噴き出す金融業界の不祥事。30年間にわたる規制緩和を追い風に急膨張した陰で、強欲がまん延、モラル低下という病にむしばまれていた。

2000万ポンド(25億円)――。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作問題で英バークレイズの経営トップを降りたダイヤモンド氏。辞退した退職金の巨額ぶりに驚きが広がった。

リスクをとって失敗しても責任は限定、うまく行けば青天井の高額報酬が手に入る。このアンバランスが金融の暴走を生んだゆがみの根源だ。

「成功のためには倫理に背き、違法行為も許される」。法律事務所ラバトン・サカローの6月調査では、米英金融業界に勤める幹部の24%がこれにイエスと回答。報酬と倫理との倒錯は、そこまで進んでいた。

カネがカネ生む

起点はどこか。米国では1980年代の預金金利規制撤廃だ。伝統的銀行にも高リスク融資や投資事業に道が開いた。「転換点が来た。かつての穏やかな日々は戻ってこない」(金融史家のチャールズ・ガイスト氏)

金融機関自らが借金を増やし、レバレッジをかける道を突き進んだ。市場での自己取引を拡大。証券化など金融技術を駆使し、家計には住宅ローンを貸し込んでいった。

金融が実体経済の成長スピード以上に膨らんだ30年間だった。マッキンゼーによると2010年の世界の金融資産総額は212兆ドル。世界の国内総生産(GDP)の3.6倍に及ぶ。20年前は2.6倍だった。

00年代の米国では企業の国内利益の4割超を金融が稼いだ。マネーがマネーを生み桁外れの利益を出す。「それが目的化してゆがみを生み、偽ってでも目の前の利益を追う風土が広がった」(コロンビア大学のグリフィス=ジョーンズ教授)

中でもデリバティブ(金融派生商品)はわずかな数値の違いが巨額な利益を左右する。LIBORは業者の申告で決まるが、担当者の塩加減でスワップといったデリバティブが大きく動き、自社のトレーダーに利益を落とす。そこに不正への動機が潜んでいた。

マヒした倫理観

「あらゆる市場の投資家の信頼を損ねた」(カリフォルニア州職員退職年金基金=カルパース=のディアー最高投資責任者)。LIBORという土台には住宅ローンなど世界で300兆ドルもの金融サービスが乗る。普通の人の生活にも影響する指標に不正の余地があることへの怒りがにじむ。

膨らんだデリバティブはもろ刃だ。自らに牙をむくこともある。JPモルガン・チェースの58億ドルの巨額損失は市場で「鯨」と呼ばれるほど肥大化した取引の失敗だ。

HSBCの資金洗浄問題では、社会との距離感を見失った銀行の姿が浮かぶ。麻薬組織の資金がメキシコ支店の口座にドル入金され、米国に運び出されていた。

著名投資家ウォーレン・バフェット氏は、自ら率いるバークシャー・ハザウェイ社の株主総会で必ず1本の映像を流す。90年代に国債の不正入札でつぶれかかったソロモン・ブラザーズの再建を請われ、自身が議会証言に立った時の映像だ。

「会社に金銭的に損失を与えても仕方がないが、会社の名誉を損ねることは決して許さない」。この問いかけは、今重い響きを持っている。

(米州総局編集委員 藤田和明)

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