ミクシィ「訪問者激減」騒動が問うSNSの本当の価値

ネットレイティングスが11月28日に公表した国内の主要SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイトの「ネット視聴率調査」が波紋を広げている。同社はインターネット上の動向調査などを手がけているが、集計方法を変更したことでミクシィが運営する「mixi」への訪問者数(アクセス数)が、9月の1472万人から10月は838万人へと大幅に減少したように見えたためだ。

ネットで話題が広がり、ミクシィ側がネットレイティングスに公式説明を求める動きにも発展した。今回の騒動の背景には、ソーシャルメディアの価値を単に数字だけで評価すべきか、という重要な課題が潜んでいる。

■従来は「イイネ!」を押しても訪問者数に

発端はITコンサルティングやシステム開発などを請け負うループス・コミュニケーションズ社長の斉藤徹氏のブログだった。ソーシャルメディアに詳しい斉藤氏は、定期的に各サービスの訪問者数をブログに掲載しており、今回のネットレイティングスの調査結果も紹介した。

これによると、10月は「ツイッター」(訪問者数は1455万人)と「フェイスブック」(同1131万人)に抜かれ、mixiは838万人だった(図1)。

図1●日本の主要SNSの訪問者数推移(家庭と職場のパソコンからのアクセス)。注1の「mixi(参考値)」は集計対象外のURLを除外した値(10月から集計変更)なので、9月と10月で「mixi」のデータとは連続性はない(ニールセン/ネットレイティングス調べ)

ネットレイティングスの調査報告では集計方法の変更について記述しているものの、掲載した訪問者数の推移グラフでmixiが急激に落ち込んでいる状況にインパクトがあったこともあり、ツイッターやフェイスブックで「そういえば最近、mixiにはアクセスしていない」「実感と一致する」といった反応が広がった。

ミクシィは「利用実態に大きく誤解を与える解釈、報道等がなされております」とプレスリリースを発表し、ネットレイティングス側に説明を求めた。

なぜ訪問者数が「激減」したように見えたのか。原因は、mixiの「イイネ!」ボタンの集計方法にある。

これまでは「イイネ!」を押した場合もmixiの訪問者数に加えていたが、実際にはユーザーがサイトを見ていないため今回から除外したのだった。この集計方法はフェイスブックなどと同じであり、いままでmixiだけが特別だったといえる。

ネットレイティングスは計測手法について詳しく説明するとともに、1年前にさかのぼって修正したグラフを発表。「mixiは堅調に推移している」とコメントした。

さらに、1人当たりの訪問時間を紹介し、mixiは約3時間、フェイスブックが52分、ツイッターが24分、「Google+(プラス)」が3分で、「サイトに対するロイヤルティーにおいて、(mixiは)圧倒的に他のSNSを凌駕している」とした(図2)。

図2●日本の主要SNSの利用状況(ロイヤルティー指標)。縦軸は1人当たりの月間訪問頻度で、横軸は1人当たりの月間訪問時間、バブルの大きさは訪問者数を示す。家庭と職場のパソコンからのアクセスによる(ニールセン/ネットレイティングス調べ)

■本当の価値は数字だけではつかめない

一般企業がソーシャルメディアでキャンペーンなど検討する場合、会議で判断するためにサービス事業者に数字を求めることが多い。たとえば、ページビュー(PV)やユニークユーザー(UU)、会員数、会員の属性(男女比や世代、地域別、職業、年収)や興味・関心事などだ。

このため、各サービス事業者は多くの資料で企業にアピールしているが、主要なデータの1つである訪問者数の計測方法さえさまざまで、事業者側から出ている数字はいわば「主催者発表」のようなものといえるかもしれない。だからこそ、ネットレイティングスのように、ある基準で各ソーシャルメディアを比較できるサービスへの要望は高い。同社の視聴調査は幅広くサイトの訪問者数を扱っており、業界のスタンダードになっている。

ただしネットレイティングスの視聴調査は、「家庭と職場のウィンドウズパソコンからのアクセスを計測している」という条件付きの結果である。最近はパソコン以外にも携帯電話、スマートフォン(高機能携帯電話)、タブレット端末など複数の機器が利用されており、ネットレイティングスの調査だけではすべてをカバーできないことは明かだ。

ソーシャルメディアは、各社のサービスごとにそれぞれ特徴がある。単に訪問者数が多いという理由だけで広告やキャンペーンに利用するのではなく、自分で実際に登録したり利用したりすることで、ソーシャルメディアの雰囲気をつかんでみることを勧めたい。

今回の騒動は、まだまだ数字が広告やキャンペーンでソーシャルメディアが選ばれる際の指標になっていることを示している。だからこそ、ミクシィの異例ともいえる対応になったのだろう。

■騒動をどう生かすかでmixiの今後が変わる

ネットレイティングスが再提示したグラフを見ると、mixiは急伸するフェイスブックに6月に抜かれていることが分かった。ネットレイティングスは「堅調」と表現していたが、実際は伸び悩みや減少傾向にあるようだ。

ソーシャルメディアで大切なことは、ユーザーの反応から学んでサービスを改善したり、ユーザーとコミュニケーションを取ってロイヤルティーを高めたりすることだ。ブログ記事がここまで大きく広がったのも、mixiに対するユーザーの関心の高さを示していることは間違いない。ユーザーのネガティブな声こそ、伸び悩んでいるmixiを映す貴重な鏡かもしれない。

今回の騒動を改善へのきっかけととらえるか、それとも単に反論だけで終えてしまうかで、今後のmixiの方向も大きく変化しそうだ。

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藤代裕之(ふじしろ・ひろゆき)
ジャーナリスト・ブロガー。1973年徳島県生まれ、立教大学21世紀社会デザイン研究科修了。徳島新聞記者などを経て、ネット企業で新サービス立ち上げや研究開発支援を行う。学習院大学非常勤講師。2004年からブログ「ガ島通信」(http://d.hatena.ne.jp/gatonews/)を執筆、日本のアルファブロガーの1人として知られる。

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