下村脩(24)ひと区切り

「GFP」の研究を終了
発見から18年、正体を解明

後に私のノーベル化学賞受賞の業績となる、緑色蛍光たんぱく質GFPは、もともとは1961年、オワンクラゲから、発光たんぱく質のイクオリンと同時に発見していたものだった。GFPは結晶になりやすい美しい蛍光たんぱく質である。

GFPは当初はイクオリンとは違い、何の使い道もないものだったが、私はこの蛍光たんぱく質のことが気になっていた。オワンクラゲの発光の色は緑色であり、イクオリンの出す青色とは異なる。緑の蛍光を示すGFPはオワンクラゲの発光のカギを握っているに違いなかった。

その謎に一応の答えを出したのは74年のことだった。オワンクラゲが緑色に光るのは、イクオリンの青い光のエネルギーを、GFPが緑の光に転換するためであることを証明した。イクオリンのそばにGFPがあると、イクオリンがカルシウムによって発光しようとするとき、そのエネルギーがGFPに移り、GFPが緑に光るのだ。

だが、GFPが蛍光を出す仕組みそのものの解明はそれからだった。79年、それまでためておいたGFPを使って、その蛍光の原因となる発色団(化学構造)を調べ始めた。使ったのは、採集に数年をかけたオワンクラゲ約20万匹分にあたる、100ミリグラムのGFPである。

まず、たんぱく質を分解する酵素を使って、GFPを小さい断片(ペプチド)に分解した。得られた無数のペプチドの中から、発色団を持つものを選び出して精製した。

その発色団の、光を吸収する性質を測定したとき、私は驚いた。というのは、その性質が、私が20年前にウミホタルのルシフェリンの研究中に合成していた、ある化合物とそっくりだったからである。

このことを手掛かりに、私はGFP内にあると推定される化合物を合成した。その特性は実際にGFPから得られた蛍光ペプチドと完全に一致した。とうとう、GFPの発色団の正体を突き止めた。

その意味するところは、それまで考えられもしなかったことだった。

普通の蛍光たんぱく質は、たんぱく質に蛍光化合物が結合している。つまり2つの分子からできている。しかし、GFPはこれとは全く違っていた。たんぱく質の中に蛍光発色団が組み込まれ、これを含めて1つのたんぱく質分子をなしているのである。GFPは200個以上のアミノ酸からできているが、その中の3つのアミノ酸が、分子内で反応を起こし、発色団を作っていることがわかった。

79年のこの発見は、その重要性から見て、GFPの本当の発見といえる。最初にGFPが発見されてから18年目のことだった。

GFPの構造を発表したこの年、私はラトガース大学のワード博士が、オワンクラゲのGFPの研究を始めたことを知った。博士はウリクラゲの発光たんぱく質の研究で見事な手腕を発揮した人物だった。

私の主な目的は、生物発光のメカニズムの解明であり、副産物のGFPについては、私はできるだけのことはしたし、やり残したことはないと判断した。GFPの研究はやめ、他の生物発光の研究に全力をつくすことにした。この不思議な蛍光たんぱく質が再び脚光を浴びるのはしばらく後のことである。

(生物化学者)

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Bubbles of river disappear rapidly.

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