日本とのつきあい – アラン・グリーンスパン 28

印象深い宮沢元首相
不良債権問題、議論交わす

ベーブ・ルースが訪日して歓迎されたニュースを子供の時に聞いて以来、日本のことには関心を持ち続けてきた。

日本製といえば、戦前は小旗とか安っぽい物という印象だった。そんな日本が敗戦で経済が破壊されたにもかかわらずへ高度な製品を輸出し始め、いつのまにか品質、技術で最高水準に達した。その変化にはいつも驚嘆していた。

初めて日本を訪れたのは米大統領経済諮問委員会(CEA)の委員長時代。一九七四年のことと記憶している。空港から東京に向かう車の中から見た印象は、ずいぶん住宅やオフィスが密集しているなというものだった。

日本人の印象を語る資格は私にはない。仕事相手の日銀幹部や財務相、首相ら政治家には会っているが、平均的な日本人像ではないだろう。残念ながら、判断するための十分なサンプルがないのだ。

個人として最も印象深い日本人は宮沢喜一元首相だ。彼が蔵相(財務相)を務めていた際に、七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)でよく話をした。世界で起きていることをいつも非常によく理解していた。その点ではG7の大半の参加メンバーよりも明らかに数歩抜け出していた。

宮沢元蔵相との会話でよく覚えているのは、邦銀の不良債権問題を巡る議論だ。八〇年代末に米国も同様の問題に直面したが、私はその時の解決法を詳しく説明した。整理した貯蓄金融機関の担保不動産を整理信託公社(RTC)が安値で売り、不動産市場を動かしたことで、米国では問題を早期に解決した。宮沢元蔵相は辛抱強く、笑みを浮かべながら聞いていたが、最後に「それは日本のやり方ではない」と言った。金融機関の破綻や多くの失業者を生むことを意味するからだ、と。

小泉純一郎元首相もとても興味深い人物だ。前任の首相たちと全く違うタイプである。知的好奇心も旺盛だった。やるべきだと思うことを示して、反対なら選挙で追い出してくれと言って結局選挙で勝ったが、こんなことは日本ではめったに起きないことではないか。

彼が主導した郵政民営化も日本の最近の歴史の中で画期的な出来事だろう。日本の個人投資家のおカネが最近海外に向かっている。低金利の金融商品に満足できなくなったためと思うが、郵政民営化はこうした流れに沿うものだ。日本にも中国脅威論があるようだが、恐れることばない。日中が競合する金野はそれはど大きくないからだ。日本が高品質の部品などを中国に輸出、それを中国が組み立てて輸出するという分業関係ができている。十三億人の消費者を持つ中国は日本にとって魅力的な成長市場だ。

気になるのは高齢化と労働人口の縮小だ。すでに高い技術力を持つ日本が生産催の伸びを飛躍的に高めるのは困難。労働力や生産性上昇に限界があれば成長も鈍る。移民を増やすことに消極的だと将来難しい状況に追い込まれるのではと恐れる。もちろん、移民は社会的な問題で日本人自身が決めること。一エコノミストとしての見解だ。

前にも書いたように、米国では日本製品への拒否反応は消え、この点では摩擦の心配は全くない。最近は自動車だけでなく、日本の野球選手も高く評価されている。イチローの打率は驚異的である。

(前FRB議長)

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