退任 – アラン・グリーンスパン 27

調整に徹し政策決定
上がらぬ金利、「謎」は消えず

米連邦準備理事会(FRB)の議長を退任するまでの一年半ばかり、私はある謎と向き合う白々を過ごすことになる。

「いったい何が起きているんだ」。私はラインハートFRB金融政策局長に思わず不満をぷつけた。二〇〇四年六月末のことだ。四年ぶりに利上げをしたにもかかわらず、長期金利が上昇しないどころか、低下したからだ。

利上げ局面に移ることで、長期金利も上昇し、住宅ローン金利の上昇を通じて、過熱、感の出ていた住宅ブームを緩和することにもつながる。そんなシナリオがわれわれの頭の中にはあった。だが、そうはならなかった。

最初は一時的な現象と考えて、様子を見守った。しかしその後、FRBが利上げを継続してからも、.長期金利はほとんど上がらなかった。この不可思議な現象を私は「謎」(conundrum)と呼んで、いろんな場で問題提起するようになった。私のオフィスには「謎」というラベルの付いたワインがたくさん送られてくるようになったが、疑問が消えることにはならなかった。

明らかなのは、長期金利の低下が世界的現象であることだった。この間、世界の二十カ国以上の国々で住宅ブームが起きている。いずれも長期金利の低下が背景にあった。

私はかねて経済のグローバル化がインフレ圧力の抑制に貢献していると見ていた。とくに閉鎖的な旧共産圏経済が世界経済に組み込まれ、億貸金の労働者が世界市場に参入するようになったことが大きいと考えていた。賃金の伸びが世界的に抑えられた結果、予想インフレ率が低下したと見られるからだ。予想インフレ率が下がれば長期金利が低下するのは自然なことだ。

だが、それに加えてもう一つの要因が世界的な長期金利低下につながっていると見るようになった。それは、経済成長を加速させた途上国を中心に膨らむ余剰貯蓄である。このお力ネが世界の金融市場にあふれ出し、金利を押し下げている可能性が大きい。

世界的な力がインフレ期待を下げ、長期金利を低下させ、不動産や株の価格を押し上げているのなら、それに立ち向かうのは非常に難しい。世界的な流れと矛盾しないよう金融政策を調整すること。我々はそれに徹することにした。

中央銀行はやろうと思えば何でも実現できるはずだという考え方が、とくに政治の世界などで目立つ。しかし、そうした見方はこれまで以上に的外れになりつつある。中央銀行の力の大半は、圧倒的な世界経済の力によってそがれてしまうのが現実だからだ。

私は〇六年一月に退任し、バーナンキ議長にバトンタッチした。個別の金融政策については言及しないことにしている。だが、連邦公開市場委員会(FOMC)の政策決定過程は非常に洗練されたものだということだけは言える。

多くの優秀なスタッフが集めている米国や世界のデータは非常に豊かだ。データにとどまらず、各地区の連銀総裁が提供する今そこで起きている現象につ、いての情報も役に立つ。もちろん、決定が常に的を得ているという意味ではない。だが、大きな誤りを起こさないように、十分に包括的な過程をへて政策が決められているということは確信を持って言うこ
とができる。

(前FRB議長)

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