田淵節也(29)再度・海の色

「アメッポン」行く末は
世の中変わる、不変の真理

バブルが弾ける直前に、僕は株式相場の潮の変わり目を直感して「海の色が変わった」と発言したことを書いた。今、その時感じたのと同じような胸騒ぎを覚える。

「アメッポン」人アメリッポンと言う人が多いが、僕はアメッポンを使う)と言われる日本は米国に振り回されてきた国だ。その米国が今また、大きく変わる節目にあるような気がしてならない。

来年の大統領選挙で優勢を伝えられる民主党候補が勝てば、イラク戦争への厭戦気分が一段と高まり、中東情勢は混沌とするのではないか。

軍事力に翳りが出れば、ペーパーマネーのドルの信認が低下し、米国は金や原油、穀物などの実物資産を裏付けとする新しい通貨制度を考え出すのではないかと思う。

そうなれば、金本位制が「ドル紙幣本位制」に変わって以来の大変化だ。世界中が混乱し、アメッポンの日本は一番大きな影響を受ける。既に、政界はざわついてきた。

僕は安倍晋三前首相のお父さん(安倍晋太郎元外相)と親しかったが、安倍さんが総理になった時、「蒸留水しか飲んだことがない人は持たないのではないか」と思った。小沢一郎さんが天下を取るのか、小泉純一郎さんが再登場するのかは分からない。いずれにせよ、日本の政治も大揺れするのではないか。

高度成長期以来、ぬるま湯につかってきた日本は、久しぶりに大激動の時代を迎えることになるように思う。

僕は日本の将来を悲観も楽観もしていない。日本は世界屈指の豊かな国だ。「職人国家」としてそれなりのステータスを保っていけると思うから心配していない。最近、円高を歓迎するようになったのは進歩だと思う。もっとも、軍事力も持たずに「金融立国」の幻想を抱いている人は幻滅するかもしれないが……。

「履歴書」を書く機会を与えられ人生を振り返っても、僕の人生なんて波瀾万丈には程遠く大したことはない。

改めて人生観を自問すれば、「人間は太古の昔から同じことを繰り返している動物」ということだ。人生は思った通りにならない。それは残念なことだが、だから人生は面白いのであり、結果的にハッピーなのではないか。

「人間三代でチャラ」とはよく言ったもので、いい事ばかりは続かないし、悪い事ばかりも続かない。人間、何が幸せで何が不幸か、本当のところは分からない。それもまた人生の面白いところだ。人間は変わらないが、世の中は変わる。これが実感であり、不変の真理なのだと思う。

長年連れ添った妻の四方子には感謝している。僕は息子の家族とは別所帯だが、妻は誰よりも、孫がかわいい。美味しい物はまず孫からで、僕は二の次だ。それが我が家の幸福につながるのだから、結構なことだと思っている。

紙幅も尽きた。かなうのならば、二つ望みがある。もう少し生きて世の中の変化を見届けたい。そして、もう一度見てみたいものがある。

それは確かブラジルの港町サントスの海岸で見た光景だったと思う。沈む夕日を背に、奴隷の子孫の黒人が跪き、先祖の故郷アフリカに向かってお祈りする姿に、ただ、感動した。理屈でなく、見る人の魂を揺さぶる一幅の絵か写真のように心に焼き付いて離れない光景だ。

(野村証券元会長)
=おわり

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Bubbles of river disappear rapidly.

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