米グーグル創業者の野望

2005年に大躍進した注目企業
米グーグル創業者の野望

英フィナンシャル・タイムズ紙が「2005年の顔」に米グーグルを選んだ。2人の若き創業者がマイクロソフトを脅かす技術力と資本力で疾走する。検索エンジンを超え、生物から宇宙まで分析する巨大電子頭脳が野望だ。

物事を大きく考えることが実を結ぶ時もある。米グーグルの創業者の1人、セルゲイ・プリン氏と話せば、大半の人の存在を定義する一般的な成功の測りに、彼が束縛されたくないと考えていることがすぐ分かる。「僕らは、事業の構築であれ、それが世界にもたらす結果であれ、できるだけ大きな成果を追求する」と彼は言う。

プリン氏と共同創業者のラリー・ペイジ氏はまだ32歳で、胸に抱く並外れて大きな野望を隠したこともない。「世界をより良い場所にする。」というのは、同社が2004年の株式上場時の声明に掲げた目標の1つだ。その考えは常に表面から遠くないところにある。

プリン氏がインターネット検索の未来について語るのを聞くと、彼とペイジ氏がどれだけ壮大な考えを持っているのかが分かる。「第2の脳のようなものを与えられたら便利でしょう」。
常に2人を代表する顔役のプリン氏が興に乗ってくると、黙って同席していたペイジ氏が陰謀めいた笑みを浮かべて部屋を抜け出す。

人の頭脳に匹敵するエンジン

プリン氏は「人間の脳は検索がいかに良くなり得るかの存在証明だ」と言う。「生物学上の計算能力というのは、ある意味で非常に使い勝手が良く、今人間とコンピューターがやり取りする速さよりず、っと速い。だから(検索に)改善の余地が大いにあるのは明白で、我々が突き当たる限界はない」。

いつか人間の頭脳に匹敵する検索エンジン?それを否定する理由はない。やっと30歳を超えた若さで、世界最強と言われるコンピューティング資源を持ち、何十億ドルもの回転資金があれば、何だ、って可能に思えるだろう。

シリコンパレーの心臓部スタンフォード大学の大学院生だった頃から、プリン、ペイジ両氏は壮大な考えを抱いたり、群衆から抜きんでたりするのを恐れなかった。「彼らは流れに逆らった」とハーバード大学ビジネススクールのテ。ピッド・ヨッフイー教授は言う。1990年代後半、世がドットコムブームに沸く最中、検索は金儲けの種や技術的に面白いものとしての人気を失った。「彼らはほかの人々が終わったと決めつけた分野を選んだ」(ヨッフイー教授)。その結果、コンピューター時代の最も華々しい成功物語の1つが生まれた。

多くの意味で2005年はプリン、ペイジ両氏の大きなアイデアが実を結んだ年だった。だが彼らが産業史上、華々しいとはいえ綺羅星のようなインターネット企業の1つに終わらず、後世に名を残せるかどうかは今後の努力にかかっている。

ここに至るまでも相当な努力を要した。「このところ極めて障害の多い時期だ、ったはずだが、彼らは見事に乗り切った」。グーグルを題材とした『ザ・サーチ』の著者、ジ、ヨン・パッテル氏はこう言う。

グーグルの検索エンジンの影響は世界中に波紋を呼んだ。米国ではヤフーが同社にかなり近いライバjレだが、米国以外では検索の4件に3件以上はグーグルによって行われている。

世界中の人がネットを使うようになるに従い、それは社会的、政治的に重大な勢力になった。グーグルが提供する情報へのアクセスは、「各国問、各国国内で民主化をもたらした」とブリン氏は言う。110年前、スタンフォード大学で最も権威のある研究者だって、今パングラテ事シュのインターネットカフェに近い人が得られるような情報へのアクセスを持たなかった」。

情報に対するそれだけの力が敵を生んだのは無理からぬことだが、それは若者らしい理想主義に燃えるブリン、ペイジ両氏の不意を突いたようだ。彼らは中国に進出する見返りとして検索の検閲に妥協したことに苦悶しており、2005年には彼らの力に対して新たな疑念が生まれた。フランスと日本の政治家が自国民のために国産の検索エンジンを作る意思を表明したのだ。

すべての社会に知識へのアクセスを与えるグーグルの検索エンジンの力が人々の注意を呼んだとすれば、同社が市場創造に一役買ったネット広告ビジネスはメディア、通信、ソフト産業の一角にパニックに近い衝撃を起こした。

検索結果に「キーワード広告」をつけるというビジネスは、その分野を開拓したグーグルとヤフーにとって有望な副業に見えたかもしれない。しかし2005年、グーグルの売上高は前年比倍増し、世界有数のメディア企業にのし上がった。これによって旧来の広告・メディア企業は自社のネット戦略の見直しを余儀なくされ、ネット利用者の関心を左右する力を持つグーグルが味方なのか敵なのか見極める判断を迫られた。

優秀な頭脳引きつける磁石

「成功したことには驚かなかったが、その度合いには驚いた」。キーワード広告についてプリン氏はこう言う。この事業の力は宿敵マイクロソフトさえをも方向転換に追い込んだ。同社は今、より多くのネット利用者を引きつけようとグーグルのようなオンラインサービスを構築する戦略を強化している。

2005年はグーグJレの技術と事業の威力が明白になった。それとともに、業界屈指の優秀な人材にとって同社を一番人気の勤務先にすることに、プリン、ペイジ両氏が成功した年だった。シリコンパレーで最も句な会社という魅力は、グーグJレの中国研究開発拠点を任せるためにマイクロソフト主任研究員のカイフー・リー氏を引き抜き、それが訴訟となったことからも明白だ。

「グーグルは最も優秀な人材を引きつける人材の磁石となった」とヨッフイー教授は言う。「あれだけの企業家精神と強さを築くのは、ほかの企業が真似したいことだ」。急成長が生んだ、プレッシャーが会社の経営体制の弱点を露呈するかもしれないが、今のところグーグル楽隊車の車輪は落ちていない。だが、成功は若い会社が遭わずに済めばそれに越したことはない誹詩中傷や競争をもたらし、プリン、ペイジ両氏そしてCEO(最高経営責任者)として招聴されたシリコンバレーのベテラン、エリック・シュミット氏が、彼らの成功が作り出した新たな役割に会社を発展させられるかどうかという疑念も生んだ。

今、シリコンパレーの話題はもっぱら、同社に事業を脅かされかねない有力企業が手を組む“反グーグル”の動きだ。最初に攻撃に出たのは、著作権のある書籍のデジタルコピーを作り、ネット上で検索できるようにするグーグルの計画に脅かされた出版業界である。

プリン氏は訴訟を何とかかわそうとしている。「一部にうるさい人がいるけれど、そんなに物議を醸すようなもので、はない。僕は情報をアクセス可能にするという僕らの使命を信じているし、人の目から隠されたままの知識が世界に山ほどあると思っている」。

グーグルは消費者の利益を代表する特別な役割を担っていると言いたげなそうした主張や、それが結局、出版業界が歓迎すべき新たな商機を生むという言い分が出版社を怒らせた。そして以前から同社につきまとっていた倣慢だという批判を蘇らせた。

プリン、ペイジ両氏に近いある人物は、それをグーグルの猛烈な急成長のせいにする。2人の創業者はメディアや政治家、ほかの行き会うすべての人にいちいち自分たちの意図を説明する時聞がないということだ。ただ同氏は同時に、彼らの経験のなさも原因だと認める。「彼らはまだ無垢だ。それでも2年前よりはだ、いぶ分かってきている」。

しかし未経験ばかりではない。ブリン、ペイジ両氏の成功は、妥協を拒む姿勢のうえに築かれた。2人に近い人物によれば、例えばホームページに広告を入れるのを拒んだ時のように、安易な選択を否定する彼らの姿勢は、会ネ土にt員をもたらすこともあった。

知性と技術に対する信頼

頑なな姿勢の裏にあるのは知性と技術の力に対する確信だ。グーグルの検索エンジンを動かすアルゴリズム(計て算手法)がそれを最も端的に表している。インターネットサービスを設計する際、ヤフーは一部人手に頼ったが、グーグルは情報を論理的に整理する技術の力に完全に頼った。

「あらゆる企業は創業者の遺伝子を映している」とパッテル氏は言う。「セルゲイとラリーの遺伝子は、いわば妥協しないエンジニアのそれだ」。
技術を信奉する2人のやり方は支持者を遠ざけることもある。グーグルに6年勤めたダグ・エドワーズ氏は先日、プリン氏と初めて会った時、学校の成績を聞かれて閉口させられた思い出を自分のブログに書いた。
「その後何年も、すべての決断を1つの方程式に落とし込もうとするセルゲイの願望は私を苛立たせることになる。それは私のキャリアに欠けていた規律をもたらしたかもしれないが、正しいアルゴリズムを引き出すだけでは表現できないものが世の中にはあるという私の信念に反していた」

ブリン氏とペイジ氏をここまで躍進させた技術的な強さは、今後の成功を約束するには不十分かもしれない。経営コンサルタントのトム・ダベンポート氏をはじめとする評論家は、彼らは新しいスキルを身につける必要があると言う。「シリコンパレーでは、技術がすべてを支配するというのは珍しい信念ではないJとダベンポート氏。「だが将来、彼らは技術だけでなく幅広い観点からアプローチする必要がある。人がどう情報を見つけてどう使うかを理解するのは、技術の問題であると同時に人類学の問題でもあるJ。

グーグルの検索エンジンの影響が広まるにつれ、他社の利益を考慮することも重要になる。パッテル氏は先日のアメリカ・オンライン(AOL)との提携を挙げ、グーグルがほかの成熟企業のように考え、相互を利する提携に踏み切る前に大きな戦略的構図を推し量るようになった兆しだと指摘する。この最もグーグルらしからぬ行為はこの場合、マイクロソフトがAOLと提携するのを防ぐという至上命題によって導かれた決断だ。
パッテル氏は言う。「この一件は彼らがほかの競合企業と同じ土俵で戦うつもりだということを示している。もし彼らがAOLがみすみすマイクロソフトの手中に落ちるのを許していたら、非常にまずい結果となっていただろう」。

生物学や宇宙探査まで視野

巨大企業に君臨するという新しい人生の現実に適応しながらも、ブリン、ペイジ両氏が並外れた野望を捨てる気配はない。プリン氏は検索について、これまでの革新に勝るとも劣らぬ劇的なブレークスルーが起きると予想。「今は想像するのも難しいかもしれないが、同じようなマグ、ニチュードの革新を実現できると思うJと言う。

だが、グーグル創業者の野望はそれだけにとどまらない。彼らはミクロ生物学や宇宙探査といった分野まで触手を伸ばしている。最先端技術を持ち、世界有数の富んだ会社を経営しているなら、大きな夢を見ない手はない。

「グーグルが持つ巨大なコンピューターインフラはミクロ生物学や計算生物学に有用なものだ」とプリン氏。「僕らは自分たちに制約を課さないし、20年ピジョンのようなものも持たない。新しいことに挑むことを厭わない」。

ブリン、ペイジ両氏が今後さらに飛躍できるかどうかは、彼らがグーグルを第一幕の先へ進められるかどうかにかかっている。「状況は人が思う以上にマイクロソフトに似、ている」とヨッフイー教授は指摘する。マイクロソフトがデスクトップのソフトを支配しているのと同様、グーグルも収益を1つの分野一一検索一ーから稼いでおり、急ぎ新規事業に挑んでいる。「彼らはいくつも実験していて、確かに実験は格好いい。だが、まだ検索以外の事業を成功させていないJ(ヨッフイー教授)。

これはグーグルの創業者2人に、2通りの将来があり得ることを示している。一方で、は、グーグルはシリコンバレーの幻の株となる。彼らの星はネットスケープなどと比べはるかにまぶしく輝いたかもしれないが、今から10年、20年後、グーグルは一過性の技術を一時期支配した企業という以上のものとして人々の記d憶に残っているだろうか?

もう一方の未来では、グーグルの巨大なコンピューター資源は継続的にブレークスルーを生み続ける。世界一難しい計算問題に対し誰よりも多くの資金、技術、頭脳集団をもって取り組めるグーグルは、21世紀前半にIT(情報技術)と生命科学を支配するようになる。

自分たちの若さと自分たちの技術が約束する一見無限の可能性を十分承知しているプリン、ペイジ両氏は、将来の可能’性を自ら制限するつもりはない。「彼らはまだ長期的な野望を決めかねているのだろう。彼らは非常に若くて、非常に裕福だ」とパッテル氏は言う。1つの可能性は、不死不滅か…」。彼の微妙な笑いから判断するに、冗談は半分だけ、半分は本気なのかもしれない。

Richardd Waters ( FINANCIALTIMES,@2005 Dec.23,The Financial Times Limited )

2006.1.16 日経ビジネス

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