500分の1秒でも映らぬ理由 – イチロー

マンスリー大リーグ特集
ichiro road to .400(6月26日現在の打率.293)

その光景を目撃した多くの人は、顔を見合わせた。六月八日の対マーリンズ戦。試合後、イチローはベンチから下がるとき、グラウンドに向かい声を張り上げた。脇で見た友人のカメラマンは言う。「審判に向けたものだと思う。試合中、ずっと厳しい表情だったから」

ファインダー越しの推測は正しい。試合後イチローは、対戦したD ウィリス投手について聞かれると、「審判次第じゃないですか」と、暗に主審を批判している。

後日、その日の写真を見せてもらった。肩より上の球を追うイチロー。見逃してストライクをコールされれば顔が曇る。
「今年はこういう打席が多い。審判の判定に苦しんでいるのかな」。メジャーを撮り続けて16年のカメラマンの目はさすがだ。元中日の与田剛氏にも、イチローはこぼしていた。「審判の判定、毎年変わるから大変ですよ」 その判定、今年は特に厳しいとの声も聞く。チームの主砲、R・セクソンも言った。「今年、外側がさらに広い」

ただ、別の視点で写真を見ると、さらに興味深い。五百分の一のシャッタースピードで撮ったイチローのフォームは、頭とつま先、つまり軸が一切ぶれていない。「それがイチローだよ」。5年間イチローを撮ってきた彼は続ける。「五百分の一でシャッターを切ったとき、いい打者なら頭とつま先にピントが来る。軸がぶれていない証拠。でも、体勢を崩されても軸がぶれない選手は珍しい」

故にスランプが短いと結論するのは早急。「写真を見る限り、去年のフォームとの違いはない」とそのカメラマン。「だからこそ厄介なのかな」。審判に矛先を向けるのは簡単。が、五百分の一秒という肉眼で追えない世界にもイチローの苦悩の原因が映らない。だからこそ彼の模索は続く。

イチロー自身も不振の理由についてこう語った。「分かったつもりのものもあるし、そうでないものもある、と言ったほうが正しいですね」

(スポーツライター丹羽政幸)

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