”情報軸”から”自分軸”ヘ – 藤巻幸夫

本物志向の強まる1年に

銀行の不良債権処理にメドがついた2004年に続いて、2005年は企業再生が大きなテーマになるといえる。老舗企業の破綻として話題となった靴下メーカー・福助の再生請負人を務めている藤巻幸夫社長が考える2005年の企業再生のカタチとは。

---2004年は福助の企業再生が話題になった。

 企業再生といっても、靴下メーカーの福助がこれだけ注目されたのは、なんといっても″老舗″だったからだろう。企業再生でも特に、地域再生や老舗と呼ばれる企業の再生が活発化すると見ている。
 老舗とは、もともと進化し続けたからこそ老舗になりえたわけで、それ自体が悪いわけではない。経営に行き詰まったのは、安定のすえに進化が止まり、老いてしまったからだ。そうした考えの下、福助は「進化する老舗・福助」という企業スローガンを掲げて再スタートを切った。

---日本の企業再生で最も必要なこととは。

「提案カ」だろう。購買層は高所得者層と一般庶民に二極化し、デフレが解消されたことによって、高級品と普及品、100円ショップに代表される低価格品、と消費は三極化した。だからこそ、どのターゲットに絞るか、提案していくかが重要だと認識しなければならない。

---再生の過程において老舗だからこその大変さはあるか。

 私が企業再生に取り組むなかで言いたいのは、「老兵は去れ」という言葉に尽きる。老害や既成事実が多く、現場のこともわかっていない。私の場合、まず自分で現場を歩き回って仕事のやり方と仕組み、社員の意識を変え、社内・市場・生産の現場も改めた。私はこのすべてを同時進行で行なった。老兵は生涯在野を貰いた白洲次郎のような立場を保ち、若手にチャンスを与えるべきだ。
 老舗には技術がある。自身の持つハードの技術とソフトの提案カを融合すれば、企業再生は決して大変なことではない。
 たとえば、うちは2005年に健康をコンセプトにしたブランドを立ち上げたいと思っている。これは、ただ体の健康を考えるだけでなく、生活を健康にしていくという発想から生まれたブランドだ。技術と提案カの融合だといえる。

---2005年のキーワードは。

「アナログ」ではないだろうか。つまり、人とのコミュニケーションから生まれるものが重要になるという意味だ。たとえば、IT化が進み、人びとは情報をなんでも手に入れることができるようになった。だが、あまりにも多くの情報が溢れてそれに流され過ぎてしまったわけだ。そこで2005年は、経験や勘など、自分の感覚により重きを置く風潮となるだろう。
 森永卓郎氏の 『年収300万円時代を生き抜く経済学』という本が売れたが、本当に年収300万円時代がくれば、他人がいいというものではなく自分がいいと思うものが大事になる。″情報軸″だった価値基準が″自分軸″に移ってくると、どんどん本物志向が強まってくると思う。

---自分なりの本物を見つけるということ。

 はい。韓流ブームでヨン様人気が沸騰したが、そもそも「冬のソナタ」は日本でずいぶん昔に流行った恋愛ドラマに似ている。今の日本の恋愛ドラマはバーチャルになり過ぎてしまった観があるが、逆に古きよき時代の恋愛がブームとなったのは、温故知新のよい例といえるだろう。2005年はその発展型として、″温故知自″(自分を知る)となると思う。そして、「身分だけが価値を見出せるもの」を企業は提供しなければならなくなる、そんな時代が来るはずだ。

●福助社長
1960年生まれ。伊勢丹に入社後、「解放区」「BPQC」の立ち上げにかかわった ”カリスマバイヤー”。
その功績を買われ、2003年10月、民事再生法を申請した老舗靴下メーカー・福助の代表取締役社長に就任。

2005年、景気は悪くなる – 堺屋太一

4年ごとの大失敗の年

2004年は、事件、事故、災害は多かったものの、経済に与える影響は軽微ですみ、全体的には景気回復にわいた一年だった。さて、2005年はどうなるか。小淵内閣、森内閣で経済企画庁長官を務めた堺屋太一氏が、2005年の景気を予言する。

---2005年の景気をどう読む。
景気はかなり悪くなるだろう。過去、大臣クラスの政府関係者で、「来年は景気が悪くなる」と明言した人は、戦後では私一人しかいないだろう。経済企画庁長官だった2000年の暮れ、「来年は二番底になる」と申し上げた。ところが、私のあとの内閣は十分な景気対策を欠き、2001年は大不況だった。今の状況は当時に似ている。2000年の年末も圧倒的多数が「減速しながら緩やかに上昇する」と言っていた。私だけが「二番底だ」と言った。「減速しながら上昇する」というのは、「自分は投資をやめるけれど、世間はやめないだろう」と言っているようなもの。あまり信じられない状況である。

---2004年を振り返ると?
米国の好景気、中国の高成長、日本の設備投資、そして日本の消費ブームの四つが景気を支えた。だが、この四つのどれもが危ない。
まず米国は、親子の赤字が拡大してドル安が進行している。このドル安は高金利につながる恐れがあるから、米国政府も親子の赤字抑制政策を採らざるをえない。そのため、米国経済は減速する。
次に中国経済は完全に過熱気味。じつは奇妙なことに、世界的に工程分業が進むなか、労働集約的な工程が先進国に集まり、資本集約的な工程が、人件費の安い中国や東南アジア、東欧で増えている。
中国の最新工場は、コンピュータ制御のため人手がいらない。そのため、7%成長でいなくなると思われていた失業者が9%成長でも解消しないという状況に陥っている。政府は設備投資の引き締め政策に転じているが、元高の予測があるから外資の流入が続き、引き締め効果は上がっていない。一般的に北京オリンピック、上海万博まで中国の景気は安泰といわれているが、2005年は調整期間になるだろう。1964年に日本が、83年には韓国が、97年に東南アジアが経験したような、短いけれど深い調整期間になる。

---日本国内は?
設備投資は、シリコンサイクルが低下しており、息切れ気味。非製造業の投資は出てきていないし、東京以外では住宅投資も少ない。
最後に国内の消費だが、小泉内閣のゼロ金利政策は、預金者の犠牲によって銀行を儲けさせるという事態を生んだ。その結果、銀行の不良債権は減ったが、家計の現金収入はマイナスになってしまった。これで物価が上昇すれば、国民的忍耐を超える問題となる。

---そこへ加えて増税。そして医療保険、介護保険などの増徴だ。
これは危ない。本当は2004年に増税すべきだった。日本政府はいつも財政を改善しようとすると不景気に突き当たる。97年の橋本内閣、2001年の小泉内閣と、4年ごとに大失敗しており、2005年はその順番になりそう。

---2005年は万博がある。
大阪万博のときは日本全国が盛り上がって好景気になった。しかし愛知万樽は、中部地方以外ではあまり知られていない。だから景気も中部地方にとどまっている。

---それは時代の違いなのか。
それもあるが、やり方にも問題がある。官僚だけでやろうとするから、想像に飛躍がない。全国を対象とした企画もほとんど拒否した。私が提案した一万平方?の広さのテレビ「ヘクタールビジョン」が実現していたら、今頃、全国でそうとうな話題になっていたと思うが……。

堺屋太一

1935年大阪生まれ。60年東京大学経済学部卒業後、通商産業省入省。
日本万国博覧会などを手がける。78年に退官、執筆・講演活動に入る。
98年7月より小渕内閣、森内閣で経済企画庁長官を務める。

週刊ダイヤモンド2004/12/25・2005/01/01新年合併号