採用は先着順でいい – 松浦元男

どうして「先着順採用」?
技術者にとって重要なのは才能よりトレーニング
最高級の設備とチャンスを与えればやる気は引き出せる
この手で、指先で世界に挑め!
どんな若者も未知の可能性を秘めている

1935年、名古屋市生まれ。68歳。60年、愛知大学法経学部卒業後、サラリーマン生活を経て、65年、樹研工業を投立。極小部品にこだわり、99年に10万分の1gの歯車、2002年には100万分の1gの歯車を発表し、注目を集める

次ページの写真、テレビで見覚えのある人も多いのではないか。
顕微鏡でなければ見えない、米粒よりも小さな歯車。プラスチック部品メーカーの樹研工業(愛知県豊橋市)は、99年、10万分の1gの歯車を開発したのに続き、昨年、100万分の1gの歯車を発表。年商27億円と小粒ながら、研究開発と技術力の高さに定評ある優良企業だ。
そんな最先端企業の技術者は、どんな厳しい選抜を経て採用されるかと思いきや、これが「先着順」である。
ほとんどが工業高校卒で、かつてパンチパーマに太いズボンという典型的な″ツッパリ″スタイルで応募してきた‥若者達だ。それが今や、三次元CAD(コンピュータによる設計)や最新鋭の工作機械を駆使して、世界を驚かす極小部品を作り出す。
なぜ、先着順なのか?松浦元男社長は、「元々、応募者が殺到することなんてない会社でしたから‥‥‥」と頭を掻くが、そもそも入社時点での社員の能力に関心がない。「うちがやるのは学問じゃなくて、あくまでテクノロジー(技術)。これはトレーニングで決まる世界」だからだ。
もちろん、やる気は必要だし、相性もある。しかし、「そんなこと一日二日で分からないから、テストするだけ時間も手間も無駄。それに、やる気だったら誰からでも引き出せますよ」と自信たっぷりに蒙譜する。
社員に与えるべきは、チャンスとモチベーション(動機付け)。具体的には、最高の設備と高い目標だ。
だから、設備の轡人は現場に任せる。条件は一つ。「三流品は絶筆っな。一流品を買え」。最近も、社員が購入を提案した工作機域を、「もっと精度が高いのがあるじゃないか」と却下して、約3倍の値段の機械に変えさせた。
それで痛い目に遭うことも多い。850万円した機械が小さな穴を二つ開けただけでお蔵人り、2700万円の機械が歯車一つ作って用済みに、といった具合だ。「『買いたい』と言い出した奴には、『騙したなあ!』と言ってからかいますが、失敗はあっていい。学ぶものがある」と鷹揚に構える。

歯車一つ2700万円!最高の設備がやる気の源

何より、最高の機械を手に入れた途端、目を輝かせて研究開発に励む社員の姿は、何物にも変え難い。
「仲間の社長から一世代前のパソコンを安く買って喜んでいるようじゃダメですよ。オンポロの軽自動車をもらって、Flレースに出ようと思う若者はいない。しかし、スポーツカーを買い与えれば、早く走りたい気持ちが昂ぶり、自ずとマシンも研究する」
可愛い社員に″贅沢″を満喫させる一方、松浦社長の生活は至って地味だ。ゴルフもしなければ、酒も飲まない。″豪遊″と言えば、平日の昼、社員を引き連れ自腹で飯を著ること。そんな社長の姿を知ればこそ、高い機械のありがたみも増す。「ケチケチするな」と言いながら、自己資本比率40%を堅持するのも社長の務めだ。
先着順採用にこだわるのには、ほかにも理由がある。
第一に、試験や面接をすると、同じフィルターを通して、似たような社員ばかりが揃ってしまう。それでは、新しい発想は生まれない。個性を重んじるため、入社後も「ルールなし」が大原則。出勤簿もタイムカードもなく残業も自己申告制と徹底している。
第二に、社員との間に信頼関係を築きやすい。「『入りたい』と言って来た気持ちが、一日坊主で終わるか、三日止巧主で終わるかはさておき、まずはその心意気を信じてやろう、と」。そんな信頼感から雇用関係が始まることを重視する。
「周囲の人の信頼を感じ、周囲の人に愛情を持てば、社会の中に自分の役割を探す。職人ならば技術を磨く」
どこまでも″人″の可能性を信じる松浦社長の心の広さこそ、樹研工業の技術を底辺で支える柱だ。

松浦元男樹研工業社長

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